拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>6.薄型テレビ(下)

2004/10/11 16:51

週刊BCN 2004年10月11日vol.1059掲載

 全世界のテレビ需要の1億3000万台から見ると、薄型テレビ市場はまだまだ黎明ステージにあることは前回述べた。ただし、普及率の高まりとともに量産効果によるコストダウンが寄与することで、確実にCRT(ブラウン管)市場を代替していくことは確かである。しかし、今後の薄型市場を考えるうえで新規参入同士のカニバリゼーションというものも考えておかなくてはならない。(岸本 章 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 ひと口に薄型テレビと言っても、その種類は多岐に渡る。現在、薄型テレビのメインストリームである「液晶テレビ」の他にも「プラズマテレビ」、北米などで人気を博す「リアプロジェクションテレビ」、さらにはまだ市場投入はされていないものの、「有機EL(エレクトロルミネッセンス)テレビ」なども長期的展望に立てば、市場に登場する可能性がある。

 このように薄型テレビの種類は多様であり、そのためこれらのデバイスがどのように棲み分けるのか、あるいは淘汰されるディスプレイが出てくるのかは予断を許さないところである。現状では、サイズによって棲み分けられると考えるのが一般的であり、40インチ未満は液晶テレビ、40-50インチ程度のサイズはプラズマテレビ、そして50インチ以上はリアプロジェクションテレビという格好である。現在、有機ELは量産化の目処はたっておらず、テレビ参入を果たしたとしても小型のモバイルテレビからの投入になるであろう。

 しかし、すでに液晶テレビの大画面化、リアプロジェクションテレビの小型化などにより、プラズマテレビの市場が縮小するリスクも顕在化してきている。このように薄型テレビは「CRTの代替」というだけでなく、薄型テレビ同士での熾烈な競争を強いられてきているのである。

 今後も、液晶、プラズマ、リアプロ、有機ELがしのぎを削っていくことは間違いない。そこで、各ディスプレイはいかに個々の特性を生かせるかにかかってくる。その際には、販売チャネルの果たす役割も大きくなるだろう。これまでのように家電量販店のみだけでなく、プラズマテレビ(大画面でかつ高コントラストが実現できる)のような法人向け用途などが期待できるディスプレイに関しては、ダイレクトセールスモデルなども各メーカーにとっては重要になってくるであろう。今後は、メーカーは技術革新はもちろんだが、各デバイス特性を見極めたうえで最適なチャネルを確保し、特定用途向けでしっかりと市場を掌握することが望まれる。
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