拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>1.2008年に向けたデジタル景気第2幕の行方

2004/09/06 16:51

週刊BCN 2004年09月06日vol.1054掲載

 今回の景気回復はしばしば「デジタル景気」と呼ばれる。IT景気と呼ばれた前回2000年前後の景気回復局面はパソコンや通信機器が主導していたが、今回は、いわゆる“新3種の神器”と呼ばれるDVDレコーダー、薄型テレビ、デジタルカメラを含むデジタル情報機器の好調さがその特徴である。(中村博之 野村総合研究所 情報・通信コンサルティング二部グループマネージャー 上級コンサルタント)

 付加価値の多くを米国企業が享受していたパソコンや通信機器に対し、デジタル情報機器は日本企業が強い国際競争力を持つ。また、高付加価値半導体などの生産財や、その製造装置まで幅広い波及効果が期待されている。

 新3種の神器に代表されるデジタル情報機器は、従来の機器に比べ、写真や映像を見る・撮るといった機能自体に変化があるわけではないが、新たな利用スタイル、大げさに言えば新たな生活スタイルを提案している点が人々を魅了してきた。

 デジタルカメラにより写真の撮り方・保存の仕方は大きく変わり、HD(ハードディスク)内蔵DVDレコーダーにより、いつでも好きな時間に、好きな順番でテレビ番組を視聴できるようになった。

 これまでのところ、こうした利用スタイル変革は、主にフラッシュメモリやHDといったストレージデバイスの進化が主導してきた。これに続く第2幕では、デジタル情報機器同士がネットワークで接続されることが大きなインパクトを持つ。すでにDVDレコーダーは上位機種からネット接続機能を持ち始めているが、今後はネット接続機能を持った携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、車載端末などを利用することで、いつでもどこでも多様なサービスを享受できる「ユビキタス・サービス」が現実のものとなっていく。

 こうしたデジタル情報機器はまず消費者側から普及し、その一部は法人市場へも展開されるというIT機器とは逆の流れをたどる。FeliCa内蔵携帯電話などはその典型であろう。

 ただし、デジタルカメラがすでにカメラ付き携帯とカニバリを始めたように、高機能化の一途をたどる携帯電話との棲み分けは必至であるし、一般消費者にとって難しすぎるネット接続設定は小売りに「ソリューション提案力」を求めるなど、製品・流通モデルに大きな変革を迫ることになる。

 この連載では、北京オリンピックの年である2008年に向けて、デジタル情報機器市場がどのようなプロセスで拡大し、そこにどのようなビジネスチャンスが潜んでいるのかを、個々の機器や市場を切り口に論じていくこととする。ご期待下さい。
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