店頭流通

米国液晶モニタ市場、販売店の主力商品に 低価格化進み普及に加速

2004/03/15 16:51

週刊BCN 2004年03月15日vol.1031掲載

 米国では、液晶ディスプレイの低価格化が進み、そのメリットを一般のユーザーでも享受しやすくなってきた。しかしそのブームには米IT業界の積極的な後押しがあり、市場論理だけでの躍進ではない。果たして意図的に作られたブームは、業界の期待に応えることができるのだろうか。

 2004年2月、米調査機関のIDCは、全世界のパソコン用ディスプレイにおいて、液晶表示による平面型のシェアが半数を超える56%となったと発表した。液晶ディスプレイは、当初から省スペースや省エネルギーの面で注目されており、利用者にとっては目への負担が少なく、人体の影響が懸念される電磁波の発生が少ないなど、数多くのメリットが魅力とされてきた。

 このように期待の大きかった液晶ディスプレイだが、その高価格が普及の足かせとなっていた。しかし、技術の向上と安定、そして生産量の増大による低価格化が急速に進み、普及が加速。上記のようなシェアにまでなった。ディスプレイ製造業界の専門調査機関である米国ディスプレイ・サーチ社の01年時点の予測では、05年時点でようやく4分の1弱のシェアを確保する程度と予想されていた。

 既に出荷が好調であった01年時点での予想をも大きく上回る数字を達成したことは、特にここ数年のIT不況を考慮すれば、驚異的と言えるだろう。

 その生産量の急速な増加による低価格化の実現には、実は意外な側面がある。それは家電販売業界の積極的な後押しだ。特にベスト・バイをはじめとする大手チェーン各社は、近年のパソコン関連商品の頭打ちや周辺機器の伸び悩みなどもあり、当面の利益確保の手段として平面テレビや液晶ディスプレイに注力してきた。つまり、販売店側の努力による出荷台数の伸びが量産効果による低価格化を促し、さらなる出荷に繋がったわけだ。

 そもそもの潜在需要が大きかったのは確かだが、現実には次世代の主力商品を模索していた各販売業者が積極的に注力したことが、このような実績に繋がったといえる。販売店側のサポートは当分続くと見られ、しばらくは好調なセールスが期待できるが、店頭での主力製品がシフトした際には、一気に売り上げが落ち込むのではないかという危惧感も拭い去れないようだ。

 現在では、液晶ディスプレイの市場は、大画面で、高品質かつ高解像度を目指す高級品志向と、15-17インチを中心とした普及価格帯の製品群とに、二分されつつある。家庭向けには大画面は必要なく、往来のブラウン管型の高級品程度の価格帯に届いたことで、一気に売れ行きが伸びた。

 しかしアジアのメーカーから出荷される液晶の値下げにより、低価格化は一層進みつつあり、実勢価格も、かつてのブラウン管型の普及品程度になりそうだ。また今後ブラウン管型は、これまでパソコンの普及が遅れていた発展途上国などでシェアを見出すと予想され、先進国では液晶が主流となると見られている。(田中秀憲)
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