店頭流通
米アップルコンピュータ 銀座に日本初の直営店
2003/12/08 18:45
週刊BCN 2003年12月08日vol.1018掲載
米本社と日本法人に距離感
アップルストア銀座店は、米アップルにとって73店舗目、米以外では日本が初めての出店となる。オープン初日は、開店前に5000人が行列をつくり、来店者数がトータルで7000人。マックユーザーだけでなく、オシャレなイメージに惹かれてか、銀座に洋服や宝石類などのショッピングに訪れた女性も来店するなど、幸先の良いスタートを切った。スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、「さらにもう一歩踏み込んでユーザーに近づくため」と、直営店を出店する目的をはっきりさせている。顧客の志向を肌で感じられる直営店でニーズを収集し製品開発につなげ、「ウィンドウズユーザーも獲得する」と、少しでも多くのユーザーをマックになびかせるのが直営店の使命だ。
ロン・ジョンソン・ワールドワイド直営店担当上級副社長も、「銀座は世界一のショッピングストリート。そのため、(銀座に店舗を置けば)日本で大きなインパクトを与えることができる。米国で培った店舗経営のノウハウに加え、日本の特殊性に合わせた販売を行う」と、日本市場での出店に自信を持っている。
また、「2004年秋をめどに大阪でも直営店をオープンする」として、「米国では、2年半で72店舗を出店した。日本では米国のようなスピード出店はできないが、着実に全国規模まで広げていく」ことを明らかにしている。
しかし、直営店展開について、アップル製品を取り扱うショップや流通商社の反応はさまざまだ。
アップルストア銀座店に近いJR有楽町駅前に店舗を置く有楽町ソフマップは、「品揃えでは直営店に勝てない。しかし、アップルユーザーが銀座に一層訪れるようになる」(佐々木寛興店長)と、相乗効果による集客率アップに期待している様子。
マック対応ソフトウェアをアップルストア銀座店に卸すコンピュータウェーブは、「ソフトウェア市場が成熟しているなか、アップルストアが新しい顧客層を開拓することがソフト販売の拡大につながる」(辻本和孝社長)と、市場に与える刺激が大きいと見る。
ダイワボウ情報システムでは、「直営店は割引をしないショールーム的な存在だと聞いている。そのため、量販店への出荷に直接影響はないだろう」(小峰伴之・取締役販売推進本部副本部長)。しかし、「製品供給で直営店が優遇されれば、将来的にはアップル製品を取扱うショップが減り、その影響で出荷量が自然と減少するのは確か」(同)と、懸念も示す。
加賀電子でも、「現段階ではコンシューマでの出荷に影響はない」(塚本勲社長)というものの、直営店の集客力にはかなわないと、「アップル製品では法人ビジネスを拡大させる」と、ターゲットの転換を図る考え。同社の場合、アップル製品での法人ビジネスは今年度で10億円程度の見通し。これを「今後3年間で50億円規模まで引き上げる」(同)と話す。
米本社は、直営店進出でブランドイメージの向上と販売増を狙う。これに対して日本法人は、地道に製品供給や店頭プロモーションといったサポートの強化を図る。日本での販売増に、米本社と日本法人は同床異夢をみているようだ。
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