店頭流通
地上波デジタル放送 開局準備、急ピッチで進む
2003/09/22 16:51
週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載
2003年12月、関東、近畿、中京地区でスタート
■着々と進む実証実験8月7日、関東地区で地上波デジタルの10キロワットフルパワー電波発射実験が行われ、いくつかの課題が見つかった。
2003年12月1日時点の放送区域は、関東地区(東京・千葉・埼玉・茨城・神奈川の一部)を例にとると、NHK総合690万世帯、NHK教育と民放キー局、MXテレビが約12万世帯となっている。電波は3段階で増力される。03年15.5ワット、04年700ワット、05年10キロワット。近畿も3段階、中京は2段階でフルパワーとなる。05年にはこの3地区合わせて約2300万世帯の人たちが地上波デジタル放送を見られるようになる。
並行して、12月放送開始のために、アナログ周波数変更対策工事(アナアナ変換作業)が2月9日から3大都市圏で実施されている。地上波デジタルはUHF帯の周波数(13-62チャンネル)を使用するが、アナログ中継局がこのUHF帯をすでに使っている場合、別のUHF帯に変更しなければ、アナログテレビ画面にノイズが入ったり、映らなくなる。
対象世帯は全国で426万世帯に上る。具体的には作業員が1軒1軒訪ねてテレビのチャンネル設定を変えたり、アンテナの向きを変えたりする。
■デジタルによる4つのメリット
さて、アナログ放送は2011年7月24日に終了することが決まっているが、一体、地上波デジタルになると何が変わるのか。
一般的には4つのメリットがあると言われている。(1)16対9のデジタルハイビジョン放送(高画質)、(2)データ放送による高機能サービス(ニュース・気象情報など)、(3)モバイル放送(携帯電話を含む携帯テレビの実現)、(4)多チャンネル放送(標準画質の2CH-3CH実現)――である。
加えて、LAN端子搭載によるADSL常時接続実現によるHTMLインターネットの閲覧・利用、チューナーに大容量ハードディスクが内蔵されることによるサーバー型放送の実現、視聴予約録画などもできる電子番組ガイド(EPG)――などに注目が集る。テレビはもはや番組を見て楽しむものから、使うテレビ(パソコンに近いもの)になる格好だ。
ただ、いくつかの課題もある。(1)サーバー型放送で視聴率がカウントされなくなる、(2)インターネットとの接続で同一画面にテレビ画面とウェブページが混在表示されることによる問題(悪質サイトや書き込みが番組に影響)、(3)05年から携帯電話向け1セグメント(1セグ)放送が開始される予定だが、映像符号化方式(MPEG4)の規格が決まっていない(著作権料をめぐる権利所有者と放送事業者が対立)――など。早期の決着を期待したい。
■メーカー、対応テレビを発売
こうしたなか、テレビ受像機開発合戦が佳境に入ってきた。
まず先陣を切ったのが松下電器産業。5月15日に「Tナビ」サービス対応デジタルハイビジョンテレビ(32型・36型)を市場投入した。Tナビは、地上波デジタル放送には対応していないが、BSデジタル、110度CSデジタルチューナーが内蔵されている。ポイントは、LAN(イーサネット)端子を備え、テレビ画面を使ったインターネットが楽しめること。
一方、メーカーの先陣を切って地上波デジタルチューナー内蔵テレビを発売したのは東芝だ。6月5日、「FACE DIGITAL(フェイスデジタル)」シリーズとしてBS・110度CSデジタルハイビジョンテレビを発売した。
シャープも、6月27日に30インチタイプの「LC-30AD1」(56万円)と「LC-30AD2」(58万円)の2機種を発売し、8月初旬までに37インチタイプ2機種をラインアップに加えている。液晶ハイビジョンの薄さと美しさは、PDP(プラズマディスプレイパネル)を上回るものがあり、先行発売にはその自信が表れているように見える。
2社以外の地上波デジタルチューナー内蔵テレビを含む方針が、明らかになりつつある。ソニーは、従来のBSデジタルハイビジョンテレビの購入者を対象に、STB(セットトップボックス=チューナー)の予約販売を開始。8月初旬にチューナーを発表。11月末までに各家庭へ届ける予定。価格は8万円程度。地上波デジタルチューナー内蔵テレビは、秋以降の発売だ。
松下電器産業も、STBの予約販売を開始。8月初旬にチューナーを発表した。12月から各家庭に届ける予定。日立製作所も、STBの予約販売を開始済み。12月から各家庭に届ける予定。地上波デジタルチューナー内蔵テレビは、秋以降の発売。三洋電機は8月6日に地上波デジタルチューナー内蔵テレビ「新VISION(ビジョン)」シリーズを発表。10月発売を予定している。いよいよ開局が目前に迫ってきた。
- 1