店頭流通

ユーティリティソフト市場 ベンダーの本格参入相次ぐ

2003/09/15 16:51

週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載

 コンシューマ向けユーティリティソフト市場が騒がしい。ソフト市場は全体的に低迷期から抜け出せず、依然厳しい状態が続いている。だが、セキュリティ分野への新規参入が続出した3-4か月前に次いで、ここにきてユーティリティソフト分野に本格参入する企業が相次いでいる。低価格戦略や販売経路の多様化といった大胆な戦略をとるベンダーも登場するなど、活発な動きが目立つ。ユーティリティという初心者には馴染みのない分野で、各ベンダーのユーザー獲得争いが急速にエスカレートしそうだ。

目立つ低価格戦略と販路多様化

 日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)が発表したパソコンソフトウェア市場動向調査レポートによると、国内パッケージソフトの総販売金額は、2001年度(01年4月-02年3月)に85年の調査開始以来初めてのマイナスに転じ、低迷期に入った。

 だが、セキュリティ分野は好調で、インテリジェントウェイブなど3社が、今春から夏前にかけて同市場に立て続けに参入した。販売店や競合他社からは、「参入者の増加はソフト市場全体の活性化につながる」(販売店関係者)、「認知度が高まり、逆に好影響」(齋藤秀明・シマンテック執行役員コンシューマ営業事業部長)と、参入をむしろ歓迎する声も多い。

 そんな中、ここ1か月の間にユーティリティ分野でも同じような動きが出てきた。NECインターチャネルやTDKマーケティング(TMK)は、これまで教育やエンターテインメント関連ソフトに強みを持っていたが、ユーティリティソフトの需要が堅調であるとして、同分野をテコ入れする方針を相次いで打ち出している。

 TMKの増渕徹・レコーディングメディア&ソリューションズビジネス・グループELC部統括課長は、「ユーザーや販売店のニーズを集約した結果、ユーティリティ分野は今後成長が見込めると判断した」と、強化の理由を説明する。

 毎年5本程度の新製品ソフトを投入しているキヤノンシステムソリューションズでも、「(今後のラインアップは)ユーティリティ分野を中核にして取り組む」(井本一朗・セキュリティソリューション事業部ソフトウェアプロダクト部コンスーマ営業グループ担当課長)と、品揃えの軸をユーティリティ分野にシフトしていく方針を示す。

 NECインターチャネルでは、ユーティリティソフトの新シリーズとして、10種類のラインアップを揃える予定だ。NECグループの強みを生かし、独自の流通ルートでハードウェアと組み合わせた提案を行っていくという。

 山下賢一・ソフトウェア・マーケティング事業部ソフト出版グループエキスパートプロデューサは、「(パソコンの製造・販売を担当する)NECパーソナルプロダクツと連携すれば、NECのパソコン画面上でデモを行うなど、ハードウェア売り場でも販促活動を行うことができる」と、他社にはない強みを強調する。新シリーズは初心者をターゲットにした製品で、基本的な機能のみの提供で価格も下げ、最も安価なソフトは1980円となっている。

 TMKの戦略は、1980円という低価格と販売ルートの多様化だ。従来の販売ルートである量販店やパソコンショップに加え、スーパーやコンビニエンスストアなどでも展開する。「初心者にアプローチできないのは、価格の高さが1つの要因」(大竹忠義社長)との理由から低価格戦略に踏み切り、「1980円であれば衝動買いも促せる」(同)として、記録メディアで培ったスーパーなどの販売ルートも積極活用していく。約1700店舗での販売を予定している。

 販売経路の多様化はユーザーの目に触れる機会を増やし、低価格はユーザー層の裾野拡大にもつながる。各社の戦略がどう機能するかが注目される。
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