店頭流通

PCリサイクルとパソコン販売 駆け込み需要は来るか

2003/08/25 16:51

週刊BCN 2003年08月25日vol.1003掲載

 今年10月の個人向けパソコンリサイクル実施直前の駆け込み需要はあるのか――。パソコンショップの多くは、これをチャンスと需要拡大に期待している。一方、メーカーは9月の出荷台数を増やすことに慎重な姿勢を崩していない。パソコンは製品サイクルが短い。9月に新製品を投入しても、すぐに冬商戦向けの新機種が登場する。ユーザーがわずかな価格の違いで旧モデルに殺到するわけがないという判断だ。しかし、パソコンリサイクル実施後、リサイクル費用の販売時徴収でパソコンの店頭価格が上昇し、購入意欲が減退、新製品投入後もしばらくの間は需要が落ち込むという可能性も否定できない。そのため、9月の需要動向を注視しながら、駆け込み需要があれば迅速に生産量を増やすなどの対応が必要だ。

メーカーは慎重な見方崩さず、増加あっても10―20%?

 パソコン専門店および家電量販店は、チラシや店頭POP、ウェブサイトなどで、10月1日からスタートする個人向けパソコンリサイクル以前にパソコンを購入するメリットを訴える。

 「10月以降は、リサイクル費用を上乗せするために価格がアップします。実施前に購入したほうがお得」と打ち出しているわけだ。

 家電リサイクル法が施行された2001年4月には、施行前に駆け込み需要が発生し、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、エアコンのリサイクル対象4製品が前年を大幅に上回る販売実績を記録した。販売店では、パソコンのリサイクル制度のスタートでも、消費者に対して、リサイクル費用分が負担増になるという事実を煽ることで9月の需要の拡大を当て込む。

 一方、メーカー側は、「若干の需要増はあったとしても、家電リサイクル法の時のようにはならない」と冷静な判断で一致している。

 NECパーソナルプロダクツの片山徹社長は、「9月に駆け込み需要があった場合は、前年同月比20%増以下にとどまる」と分析する。理由は、「昨年5月下旬に資材高騰でパソコンが値上がりした。その時は1-2週間前に駆け込み需要があり、出荷台数は前年の同じ時期に比べ20%増となった。リサイクル費用負担による売価の上昇幅は、資材上昇時よりも低い。そのために増加は20%以下にとどまる」とみる。

 富士通パーソナルズでは、「大幅な需要増は期待できない」(油谷榮一・取締役営業副本部長)と“特需”はないという考え。「新製品を投入する10月以降が勝負」としながらも販売台数の拡大に対する期待がショップにあることも理解しており、需要増の兆しが見えれば、増産対応も考えるという。

 ソニーマーケティングでも、「消費者は価格よりも用途に適した機能が搭載されているパソコンを選択している。価格の上昇やリサイクル費用といった要因で需要が増えるとは言い難い」(北村勝司・VAIOマーケティング部プロダクツMK1課統括課長)とやはり否定的だ。

 アップルコンピュータは、「9月の出荷計画に対して10%程度は上昇する可能性はあるが、期待はしていない」(木日出夫・コンシューマセールス本部長)と期待感はゼロ。しかし、販売台数については、「6-7月は生産を抑えたことで販売機会を逃した」(木本部長)という反省から、「9月は確実に前年同月比プラスに持っていく」という覚悟で、もし需要増が発生するとしても10%程度のプラス要因としか見ていない。

 同社は、新製品「POWER Mac G5」を8月末までに市場投入する計画で、さらに、ソフマップと共同でウィンドウズ対応パソコンからMacへの乗り換えキャンペーンを9月27日まで実施し、Macユーザーの新規開拓を図る。

 各メーカーが慎重な姿勢をみせるのは、「季節商戦で新製品が次々に投入されるパソコンでは、商品サイクルの長い家電製品のように大きな駆け込み需要はない」と商品サイクルが短く、しかも、性能が格段に向上するため、10年から15年も使用する家電製品とは自ずと性格が異なることも理由の1つ。まして、毎年あるわけではないリサイクル制度のスタートという変化が、1年を通して、販売が上向く冬商戦に影響することも避けたい、という思惑も見え隠れする。
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