店頭流通

パソコン夏商戦 好調な滑り出し

2003/06/30 16:51

週刊BCN 2003年06月30日vol.996掲載

 今年の夏商戦は昨年を上回る――。パソコン販売店の共通した言葉だ。夏商戦のスタートとなる6月は各店とも滑り出し好調で、「まだ始まったばかりで油断はできない」としつつも、「昨年よりも見通しは明るい」と口を揃える。「モバイル」、「通信」が売れ筋商材のキーワードとなっており、デジタルカメラや外部ストレージなどの「入出力機器」の需要も依然強い。6月の好調な滑り出しを弾みに、「夏商戦トータルでみても前年の夏商戦超えはできる」と、各店では予測している。

モバイル、通信、入出力機器がキーワードに

 東京・秋葉原に拠点を構えるカクタソフマップの井澤秀夫店長は、「商戦初期となる6月は予想以上の滑り出し」としている。同店ではこれを受けて、「(昨年に比べ)夏商戦トータルでみても130%以上の数字を叩き出せる」(井澤店長)と、強気の見通しを立てる。

 また、オーエー・システム・プラザ東京本店など、秋葉原に名を連ねる各店舗でも、「人の集まりが良く、購入意欲も高い」と、昨年以上の売り上げを予測している。

 ヨドバシカメラ新宿西口本店では、昨年の夏商戦に比べ売り上げ見込みで約5%増と、他店と比べると慎重な構え。しかし、日野文彦・取締役部長新宿西口本店統括店長は、「決して楽観はできないが、昨年よりも今のところは順調」と話す。

 カクタソフマップの井澤店長は、今年のパソコン夏商戦について、「ヒット商品や強いメーカーは特にないが、満遍なく売れている」と分析する。

 同等機能の製品で前年同期よりも1000-5000円ほど価格が下がるなど、値頃感が出てきたことや、色のバリエーションや形状など、デザイン性に優れた製品を各社とも豊富に揃えていることが、ユーザーの興味を引いているという。また、「今年の夏モデルは各メーカーそれぞれに個性がある。製品コンセプトも分かりやすく、ユーザーに提案しやすい」(秋葉原の大手ショップ店長)と強調する。

 売れ筋商材のキーワードは、「モバイル」、「通信」、「入出力機器」。各店とも、パソコンの総販売台数の約7割をノートパソコンが占めている。BCNランキングでも、ここ数週間、デスクトップパソコンの出荷台数は、前年同週比で5-15%減と前年割れしているのに対し、ノートパソコンは同10-15%増で推移している。

 井澤店長、日野店長ともに、「家庭で2台目のパソコン購入を検討しているユーザーが非常に増えており、セカンドマシンとして薄型・軽量のモバイルパソコンを選択するケースが多い」と話す。また、井澤店長は、「今年は家庭にパソコンが2台以上普及していく年になるのではないか」と位置づける。

 モバイルパソコンの好調さを受けて、データ通信用PHSや無線LANの需要も高まっており、相乗効果を生んでいるという。また、デジタルカメラや外付けHDD、記録型DVDなどの「入出力機器」も依然好調で、「パソコンと組み合わせたキャンペーン販売などに力を入れており、効果を生んでいる」(井澤店長)という。

 そんななか、「好調にも関わらず、メーカーは消極的な姿勢で出荷台数をコントロールしている。消費者の購入意欲が高まっている大事な時に商材がないのが一番恐い」と、複数の店頭関係者は洩らす。

 消費者の購入意欲が高まっているなか、在庫不足という単純な機会損失を夏商戦期に出すことだけは避けたいものだ。
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