店頭流通

富士通のパソコン販売 前年同週比130%以上を維持

2003/06/16 18:45

週刊BCN 2003年06月16日vol.994掲載

 富士通(秋草直之社長)のパソコン販売が順調だ。BCNランキングによると、夏商戦向けに新製品を発売した5月第3週から前年同週比130%以上の水準をキープしている。同社は今年4月、それまでデスクトップとノートパソコンで切り分けていた事業組織を個人向けビジネスと企業向けビジネスに再編。個人と企業それぞれに特化したマーケティング体制へと切り替えた。販売会社の富士通パーソナルズ(小幡喬士社長)もパソコンショップ向け販売施策を強化し、巻き返しに余念がない。富士通では、この夏商戦で前年比2ケタ増を維持していく構え。

夏モデル、好調

 図は、BCNランキングで直近4週間における富士通のパソコン販売の前年同週比推移を示した。同社は5月13日に夏商戦向けの新製品を発売。5月第3週はデスクトップが台数ベースで前年同週比147%、金額で同138%、ノートパソコンが台数で同174%、金額で同161%を記録。以来、デスクトップ、ノートパソコンともに同130%以上で推移している。

 同社は、従来の「パーソナル販売推進統括部」を今年度から「パーソナルマーケティング統括部」に変更。それまで、デスクトップは「第一販売推進部」、ノートは「第二販売推進部」が担当していたが、その体制を個人向けビジネスに特化した「コンシューマPC推進部」と、企業向けビジネス専門の「クライアントPC推進部」に切り替えた。

 田中博美・パーソナルマーケティング統括部コンシューマPC推進部長は、「一般家庭へパソコンが普及し、ブロードバンド環境も当たり前になりつつある。そんななか、いかに付加価値機能を搭載できるかが重要。今回の組織再編で、個人顧客のニーズに合ったパソコン販売という点で動きやすくなった」と強調する。

 富士通では今年の夏商戦向けに、ノートパソコン「FMV-BIBLO」のラインアップに縦置き型の新スタイルモデル「RS」シリーズを追加した。自由に配置できるワイヤレスキーボードを採用。リモコンによる簡単操作で液晶テレビのように利用できる。

 田中部長は、「最近は、家庭でもA4オールイン型ノートを使っている場合が多い。“ノートを家庭で”という意識がさらに高まれば、デスクとノートの垣根がなくなるのではないか」と分析。「RSシリーズは、その第一弾の製品。今後もデスクとノートという切り分けがない製品を強化していく」意向だ。

 販売会社の富士通パーソナルズでは、パソコン専門店や家電量販店への販売施策として、地域や各ショップの特性を生かした販売提案に力を入れている。

 具体的には、(1)季節や客層に合わせた売り場づくりの提案、(2)集客の向上やショップの売上増につながる企画の立案、(3)訴求ポイントが分かりやすいPOPの活用や、ポケットマニュアルなど接客しやすい環境づくり――などを徹底しているという。

 同社の奈良末松・取締役営業推進本部副本部長は、「パソコンの世帯普及率が高まり、なおかつ前年割れが続く市場だけに、今後需要が急に増えることは期待できない。しかも、先行き不透明な経済状況では、消費者の購入マインドが下がっている。需要を掘り起こすには、地にしっかりと足を着けたビジネスを行うことが重要だ」と強調する。

 そこで、6月初旬から店頭プロモーションを開始。8月中旬までに全国200店舗で販売支援を展開する計画だ。

 富士通の田中部長は、今回の組織再編により「個人向けに特化することで販売会社と密に情報をやり取りできる」としており、「販売会社との連携を一層強化することで、この夏商戦は前年比2ケタ増を維持していきたい」と意欲的だ。
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