店頭流通

パソコン販売 メーカー、販社とも前年比増見込む

2003/05/26 16:51

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

 夏商戦のパソコン市場は上向く――。夏を前にパソコンの売れ行きが気になる頃だが、各メーカー、販売会社とも自社のパソコンビジネスが前年同期を上回るとの明るい見通しを立てている。一方、10月から始まる個人向けパソコンリサイクルの影響については、各社の見解はさまざま。現段階ではパソコンビジネスを後押しする1つの要因になるものの、9月に駆け込み需要が確実に見込めるとは言い切れないようだ。そのため、出荷量の波は例年通りを計画するパソコン販社が多い。今年に入ってからも依然としてパソコン需要が厳しい状況にあるなか、パソコンビジネスを好転させるには、この夏商戦が山場となりそうだ。

夏商戦で市場は上向く?

 NECカスタマックスでは、「6月は前年同月を上回る。7月と8月は若干の増加、悪くて前年並みではないか」(西田久能・マーケティング本部商品企画部長)と分析する。

 大塚商会は、「コンシューマ市場に関しては、2001年と同じ水準になる可能性が高い」(広瀬克彦・理事ビジネスパートナー事業部長)とみる。

 ダイワボウ情報システム(DiS)でも、「昨年6月は予想外の落ち込みだった。今年は確実に前年を上回る」(小峰伴之・販売推進本部副本部長)と見通す。また、自社ビジネスに関しても、「地域で分けていた組織を、全国対応量販店に向けた専門部隊、流通系の専門部隊、ウェブの専門部隊などに再編したため、各顧客やパートナーなどのニーズに一層迅速に対応できる体制が整った。6月は台数ベースで前年同月の115-120%、7-8月は110%を目指す」(同)構えだ。

 東芝では、「昨年の落ち込みを考えれば、6-8月のパソコン市場は前年同期の110%で推移するのではないか」(長嶋忠浩・デジタルメディアネットワーク社PC事業部PCマーケティング部長)と予測する。

 同社では、東京と神奈川、名古屋、大阪などの主要都市で、人通りが多い駅前広場やショッピングモールなどを活用し、ワイヤレスやDVDを切り口としたプロモーションを展開。「ダイナブックでできる用途を多くの消費者に訴求することで、6-8月は台数で前年同期の200%の販売を見込む」(長嶋部長)と強気だ。

 比較的厳しい予想をするパソコン販社もある。ソニーマーケティングは、「前年と同じ水準」(阪口顕弘・VAIOマーケティング部統括部長)とみており、富士通パーソナルズ(FJP)でも、「市場に大きなキーワードがないため、良くて前年並みではないか」(奈良末松・取締役営業推進本部副本部長)と分析する。

 だが、自社ビジネスに関しては、前年同期を上回ることに注力する。ソニーマーケティングでは、「AV(音響・映像)機器メーカーとしての原点に戻り、バイオ1台で音楽から映像までを簡単に楽しめることを訴求する」(阪口統括部長)構え。

 FJPでは、6月初旬から8月中旬にかけて全国200店舗で店頭プロモーションを実施。各地のショップの声に耳を傾けながら、地域や客層、店舗特性などを踏まえた柔軟なプロモーション展開を図る。

 「市場が厳しい状況にあるため、地にしっかりと足を着けたビジネスを行う。6-8月は台数で2ケタ増を見込む」(奈良副本部長)としている。

 10月からの個人向けパソコンリサイクルの市場インパクトに関しては、「需要を喚起する材料ではある」(ソニーマーケティング・阪口統括部長)、「ビジネス拡大につながるアイテムの1つにはなる」(大塚商会・広瀬事業部長)とみるものの、実際に出荷量を増やすかどうかは慎重になっている企業が大半だ。

 各社とも、パソコンリサイクルによる駆け込み需要があろうとなかろうと、「6-8月の販売は拡大していく」といった点では共通しており、冷え込んだ市場が回復に転じられるかどうかは、この夏商戦が1つの山場になることは間違いなさそうだ。
  • 1