店頭流通
アップルの音楽配信事業 違法コピー問題の打開策となるか
2003/05/19 18:45
週刊BCN 2003年05月19日vol.990掲載
同社の音楽配信サービス「アップル・ミュージック・ストア」は、デジタル楽曲管理ソフトのiTuneに組み込まれ、ソフト上でアーティスト名や、アルバム名、曲名などで欲しい曲を簡単に検索できる仕組みになっている。
登録曲数は、大手レコード会社の有名アーティストの曲を中心に約20万曲。すべての曲が30秒間試聴でき、ワンクリックで好きな曲を1曲99セント(約120円)で購入できる。会費はない。
自分で好きな曲を集めてプレイリストをつくりCDに記録することも可能。ただし1つのプレイリスト当たりCD10枚まで。プレイリストの内容を少しでも変更すれば何枚でもCDを作成できる。携帯プレーヤーへのコピーは無制限。
無料のファイル交換サイトは、ポップアップ広告の洪水状態で、楽曲の中には音質が非常に低いものもある。一方、レコード会社大手が運営する有料サービスは、月会費がある上、コピーに関する規制は非常に複雑だ。
アップルのサービスは、こうした問題点を克服し、簡単で使い勝手をよくしている。このため評判は上々で、4月28日のサービス開始日だけでも20万曲以上の売り上げがあった。報道機関なども「ユーザーを犯罪者予備軍として扱わない最初のサービス」(ニューヨークタイムズ)、「通常の利用方法なら規制に縛られない最初のサービス」と絶賛している。
現在は同社のパソコン「マッキントッシュ」上でしか利用できないが、年内には「ウィンドウズ」向けに同様のソフトとサービスを提供する予定という。
アップルが同サービスを実現するための最大の難関は、音楽業界だったとみられる。法的措置などの強硬手段を取っているにもかかわらず、違法コピーは一向に減少せず、音楽業界は非常に神経質になっているからだ。
最近では、ダミーファイルをネット上に点在させるといったハッカー並みの手法を採用したり、一般ユーザーにまで警告の電子メールを送付し始めている。
しかし、強硬手段だけではユーザーとの関係が悪化するだけで、違法コピーを撲滅できないことに音楽業界も気づき始めた。そのタイミングを見計らってアップルが今回のような妥協策を提案したようだ。音楽業界にとっては、アップルユーザーという比較的小さな市場でこの試みが成功するか、まず見極めたいという思いもあったのかもしれない。しかし、もしアップルのサービスが広く受け入れられ違法コピーが減少すれば、同様の利用条件がネット時代の音楽配信の基本的な形になることは間違いなさそうだ。(湯川鶴章)
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