店頭流通

T・ZONE.、土壇場の経営再建 アミューズメント系に活路求める

2003/02/17 18:45

週刊BCN 2003年02月17日vol.978掲載

 昨年8月、“リストラ完了宣言”をしたのに申し訳ない――。社員の半数を解雇するT・ZONE.の小山功社長代行の言葉だ。2月20日付で実施する第四次リストラでは、約100人の社員を半分の約50人に削減する。最盛期の500人体制と比べると10分の1へ減ることになる。旧・亜土電子工業時代から要職に就いてきた小山社長代行は、「皆、去っていくのに、(私だけが)残ってしまった」と肩を落とす。一方、コスプレ喫茶の2号店を2月14日、東京都武蔵野市・吉祥寺に開店。余力を振り絞り、経営再建に努める。(安藤章司●取材/文)

社員を半分に削減へ

■収益面での自立目指す、ヴィーナスの判断に注目

 T・ZONE.は昨年5月、親会社で投資会社のヴィーナスファンド・ホールディングス(以下ヴィーナス)が送り込んだ横山隆俊社長の指揮のもと、ハードウェア・ソフトウェアともにマニア層を狙う路線を打ち出した。本来なら、この下期(2002年10月-03年3月期)には黒字化する計画だった。だが、主力のT・ZONE.事業の不調で、「目標額を達成できない見通し」(関係者)になったことから、横山氏は2月3日付で事実上の更迭になった。表向きは健康上の理由による退任とした。

 昨年初め、旧親会社のCSKからヴィーナスに移行するとき、T・ZONE.にはおよそ200億円を超える有利子負債があった。だが、ヴィーナスが約4億8000万円でT・ZONE.を買い取ることを条件に、CSKが負債を全額肩代わりした。CSK傘下時の2回のリストラを経て、昨年5月時点で約220人の社員が残った。ヴィーナスに移行後は、採算性の悪さを理由に、さらに半数の100人近くまで減らした。これが3回目のリストラだ。

 社員の中からは、「昨年3月、CSKに借金を棒引きしてもらったにも関わらず、次々と店舗を閉め、『やらない』と言っていた人減らしも強行した」と、ヴィーナスが送り込んだ横山前社長に非難が集中した。T・ZONE.幹部は、「ヴィーナスが設定した再建計画の目標値は“絶対”であり、不採算店は容赦なく切られる。横山さんも、ヴィーナスが期待したパフォーマンスを維持できなかったため、続投できなかった」と話す。

 2月2日には、吉祥寺店を閉鎖し、最盛期27店舗あったT・ZONE.は東京・秋葉原に2店舗を残すのみとなった。さらに、主力のT・ZONE.アキバプレース2階部分の売り場でも、「採算性が悪い」のひと言で、1階の売り場のみの営業となった。

 だが、一方で、伸びている部分もある。T・ZONE.内にある「アミューズメント・コンテンツ事業部(AC事業部)」だ。今回、2月14日に吉祥寺に新規出店するコスプレ喫茶「カフェメイリッシュ」は、パソコン販売のT・ZONE.事業部とは異なり、AC事業部の管轄だ。秋葉原に続き、第2号店となる。AC事業部長の佐々木俊一取締役は、子会社でアミューズメントソフトを卸販売するジェイ・ノードの社長も兼務する。

 AC事業部は、秋葉原にアミューズメントソフト販売の「エマニア」(1店舗)を運営しており、メイリッシュ(2店舗)と合わせて、アミューズメント系のソフトやグッズ、サービスを販売する。T・ZONE.グループ全体の売上高に占める比率は、約3分の1程度だが、パソコン関連の販売不振を受けて、利益の大半はAC事業部で稼ぎ出す。佐々木取締役は、「AC事業は、T・ZONE.事業とは別路線を歩みつつある」と、収益面から見た“自立”に自信を示す。

 小山社長代行は、「次期社長の人事はヴィーナスが決めること。早急に決まると思うが、今はまだ分からない」と話す。

 「T・ZONE.ブランド」の価値や「自作パソコン」の市場性、「アミューズメント事業」の将来性など、T・ZONE.グループの進むべき方向性は、投資会社がT・ZONE.の“どの部分”に価値を見出すかで決まる。
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