店頭流通
CG制作ツール「シェード」の行方
2003/02/10 18:45
週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載
エクス・ツールス、事実上の倒産
再出発の道はあるのか
■負債総額16億円、イーフロンティアに営業譲渡 CG制作ツールのシェードは、テライユキなどデジタルアイドルブームの波に乗り、最盛期には年間8万本近い出荷数を記録し、売上高15億円、経常利益5億円近くを稼ぎ出した。だが、ブームはいずれ沈静化する。シェードの開発元であるエクス・ツールスの坂井一也社長は、販売不振から負債総額約16億円を抱え、事業存続は難しいと判断。「イーフロンティアに営業譲渡したのち、会社を清算する」方針を示した。
1月19日、東京地裁に民事再生手続の申し立てをする前日、イーフロンティアの安藤社長は、坂井社長から初めてシェードの営業譲渡に関する連絡を受けた。
安藤社長は、「エクス・ツールスの経営が苦しそうだということは感じていたが、16億円も借金をしていたとは知らなかった。しかし、ここで譲渡を断れば、シェードブランドは地に墜ちる。地に墜ちたほうが“安く買える”と思えば、ここまで早い反応はしていない。クリエーターは、今日もシェードを使い新しい創作活動に取り組んでいる。1日たりとも中断できない」と話す。
安藤社長は、1996-99年までエクス・ツールスに勤めた後、イーフロンティアとして独立した。独立後もシェードの総出荷数の約2割を流通卸として小売店に卸している。同社専務の鷹見学取締役や、出版子会社のビー・エヌ・エヌ新社の幹部の多くがエクス・ツールスや、同社の前身に当たるシステムソフト(樺島正博社長・当時)に馴染みが深い。
イーフロンティアには、エクス・ツールスへの支援も含めて、数億円相当のシェードの在庫を抱えていた。断れば不良資産になるため、敢えて承諾する意志を示したという見方もできる。だが、実際はそう簡単に割り切れないものがある。
■ビジネス的には勝算あり、海外に新たな販路を開拓
エクス・ツールスに詳しい関係者は、「安藤さんは、あくまでもビジネス的な勝算があるからシェード事業を引き受ける意志を示したのであり、自分を育ててくれたからという恩義ではない」としながらも、「ただ、シェードを受け継ぐとしたら、自分しかいないという義務感、責任感は、人一倍強く感じたに違いない」と推測する。
イーフロンティアは、ソフト流通卸が年商20億円の約9割を占める。残り1割をデジタルアイドルのフェイフェイなどのコンテンツ制作が占める。静止画を中心としたCGは、制作ツールにシェードを使う。フェイフェイは、韓国サムスンや、中国のテレビ局のキャラクターになったりと、アジアで人気が高い。昨年12月には、アジア向けの営業拠点を上海に開設した。
「シェードの弱さは、販売先のほとんどが国内に限られていることだ。今年4月以降、米国や欧州にシェードの新しい販路を開拓する」と安藤社長は意気込む。シェードの継続的な開発や世界展開にかかる費用は、少なく見積もって数億円から数十億円かかる。イーフロンティアの年商に匹敵する額だ。
営業譲渡にかかる費用などは、明らかにしていないものの、従来のイーフロンティアの事業計画を抜本的に見直す必要が出てくるのは必至。日本が世界に誇れるデジタルコンテンツ制作ツールであるシェードを、見事に立て直すことができるのか。安藤社長の手腕に注目したい。
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