店頭流通

イーマシーンズパソコンが旋風 出荷目標をはやくも上方修正

2003/02/10 18:45

週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載

 昨年12月20日から出荷を開始した米イーマシーンズが好調な出足を見せている。全米パソコンショップ市場で第2位のシェアを誇る同社が、九十九電機、石丸電気と提携して日本に本格上陸してから、早くも50日が経過。一部モデルでは品切れとなり、すでに年間販売目標を大幅に上方修正するという好調ぶりだ。低価格を武器に、日本市場に旋風を巻き起こし始めたイーマシーンズ。その出足を追ってみた。(大河原克行(ジャーナリスト)●取材/文)

売れ行きが予想を遥かに超えた

 昨年12月2日の製品発表後、日本に持ち込まれた8台のイーマシーンズ製パソコンは、会見会場からそのままショップ店頭に持ち込まれた。同20日の出荷開始までの間、直接ユーザーに見てもらうためのデモ機は、この8台しかなかったからだ。

 週末、ツクモ(九十九電機)店頭のイーマシーンズの前には、多くの来店客が群がった。最大の魅力は、4万9800円から(モニタ別売り)という低価格ぶりだ。

 「すぐに手応えを感じた。ネットでの予約を含めて、出荷開始までに約1500台もの予約が入った」というのは九十九電機の後藤大和・販売促進部長。当初計画では、1月末までに3000台を出荷、3月までに1万台を売り切る予定だった。

 だが、売れ行きはそれを遙かに上回った。12月末には、4万9800円の最下位モデルの「N1840」と、マルチメディアモデルである最上位の「N4010」が品切れとなり、出荷比率の5割以上を占めると見られる5万9800円の「N2040」も、「多めに発注していたが、それでも、品切れ瀬戸際の線で推移している」という。

 現在、月3回の入荷体制も、1回あたりの発注量を増やすことで対応していく考えで、「2月10日以降は、品切れしない体制がようやく整えられそう」と話す。

 同社では、当初10万台としていた年間出荷計画を12万5000台へと上方修正。3月までは月3000台としていた計画も、2月からは月1万台へと3倍規模の出荷台数へと引き上げるほか、当初は予定になかったマイクロソフトオフィスを搭載したモデルを1月下旬から追加して、幅広い需要に対応している。

 九十九電機、石丸電気がここまで強気な数字を見込むのは、出足が好調であった以上に、不良率が極めて低いという要素の方が大きいようだ。

 「イーマシーンズ機の出荷以来、初期不良らしい初期不良はいまだに1、2件程度」(後藤部長)という。

 当初、月3000台程度の出荷台数に絞り込んだのは、高い品質を要求する日本で、仮にクレームが多く発生した場合に対応できる範囲にとどめておきたいという読みがあった。

 米国では、1分以内でのクレーム対応、電話/メール/チャット/リモートアクセスという4つのサポートプログラム、そしてEURPP(アープ)というエンドユーザーが直接部品だけを交換するという独自のサポート体制で高い評価を得ている。だが、日本でも同様の体制を確立するまでには時間がかかると見ていた。

 ところが、初期不良率が低いこと、問い合わせ件数も現時点では極めて少なく、米国並みのサポート体制構築も早期に実現できそうなことから、出荷台数の上方修正に踏み切った。

品質、店頭の注文生産が差別化に

 イーマシーンズの人気の要因は、コストパフォーマンスの良さだ。 4万9800円という価格ばかりが取り沙汰されるが、単なる低価格パソコンとは一線を画している。

 セレロンおよびペンティアム4の採用に加えて、インテル845G/GLチップセットを採用。ブラックとシルバーを基調とした筐体デザイン、さらには米国ではオプション製品の上位モデルキーボードを日本では標準採用した点も、この価格帯では味わえない高級感を醸し出すことに成功している。また、いくつかのイーマシーンズならではの特徴もある。

 「N1840」および「N2040」は、メインメモリで128MBと、ややメモリ容量が少ないが、USBスロットを6基、しかもそのうち2基をヘッドフォン、マイク端子と共に前面に配置、使い勝手を高めているなどの工夫は見逃せない。

 また、「中を開けて、自由に拡張してください、というのがイーマシーンズの基本的な考え方」(後藤部長)というように、手回し式の2つのネジで簡単に開閉できるケースカバーや、ケース内に手を入れても手に傷が付かないように、角のバリをとっている点も同社製品の特徴だろう。

 さらに、電話サポートの際に、すぐにユーザーが問い合わせできるように、前面の端子収納部分にサポートセンターの問い合わせ番号とシリアルナンバーを表示。これも、シリアルナンバー確認の際に、電話口で手間取ったり、背面をのぞき込むといったことがないようにという配慮と、1分以内の問題解決を掲げるという狙いからだ。

 そして、基本的な考え方として、アプリケーションソフトを詰め込まずにプレーンな仕様としているのも、九十九電機、石丸電気の特徴を生かせることにつながっている。

 「デルコンピュータの場合、電話やネットによるBTO(注文生産)で、ユーザーの目的にあった仕様にできるが、九十九、石丸では、店頭に展示されているソフトや周辺機器を組み合わせることで、ユーザーの要求仕様にあわせた製品が構築できる。まさに、店頭販売の品揃えのメリットを生かした『店頭BTO』が可能な商品」(後藤部長)というわけだ。

 メーカー製デスクトップパソコンが高価格帯へとシフトするなか、依然として根強い人気を誇る低価格パソコン。イーマシーンズのパソコンは店頭販売のメリット生かすことができる製品ともいえ、この出足を見る限り、当面は台風の目となりそうだ。
  • 1