店頭流通

大盛況だった今年のCES

2003/01/27 16:51

週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載

 米国のハイテク関連の主要な国際見本市が規模を縮小しているなか、1月9-12日の4日間、米ラスベガスで開催された世界最大規模の家庭向け電子機器の国際見本市「2003 International CES(Consumer Electronics Show)」は予想に反して大盛況となった。出展社数は2283社と昨年秋のコムデックスを抜き、予想の10万人を上回る11万6687人が世界128か国から訪れた。ネット家電、ホームメディアサーバー、ワイヤレス製品、第3世代(3G)携帯電話、有機EL、MPEG-4/AVCプレイヤーをはじめ、最先端の製品が出展された。

4日間の来場者は11万人超える

■活況を呈する米家電市場

 今年のCESが好調だった背景には、米国の家電市場の活況がある。米国では、DVDプレイヤー、HDTV ReadyのDTV(デジタルテレビ)対応機器、プロジェクションテレビ、MP3プレイヤー、モバイル機器などの販売が好調だ。米CEA(Consumer Electronics Association)の統計によれば、家電製品の売り上げ(工場出荷額)は、2001年が930億ドル(約11兆5600億円)だったのに対し、02年に962憶2500万ドル(約11兆9600億円)と対前年比3.7%増となり、03年は1000億ドル(約12兆4300億円)を超え、06年には1200億ドル(約14兆9000億円)に達すると予測されている。

 CEAのゲーリー・シャピオ理事・CEは、CESの開幕にあたり、「CESは、テクノロジーを発表し、それを学ぶ場となった。03年は業界にとっては挑戦的な年になる。トレンドとしては、家電関連のものがワイヤレスに移っていく。すでに天井を打ったという見方も出ているが、マイクロソフトがSPOT(Smart Personal Object Technology)を発表したように、この分野はまだまだ伸びる。MP3プレイヤーの工場出荷額は対前年比30%増と増大し、DTV関連機器は(DTV Readyも含めて)前年の210万台を上回り250万台出荷するなど順調だった」とコメントした。

 今回のCESでは、家電製品が着実にワイヤレスに向かい、機器間のデータ交換ができるように発達している。また、徐々に駆動部をなくしテープレスの商品が増加していることが確かめられた。

■ソニー、エンターテインメント性追求

 マイクロソフトは、XBoxを橋頭堡に家電へ侵攻を強化して、今回はSPOTの第一弾としてインテリジェント腕時計と共に、数々のスマートデバイスを発表した。

 基調講演では、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼ソフト開発最高責任者やインテルのクレイグ・パレットCEOが、家庭でもあくまでパソコン中心の世界を描いた。

 これに対し、ソニーの安藤国威社長兼COOは、「ユビキタス・バリュー・ネットワーク」の実現の3条件として、第1にブロードバンド・エンターテインメントセンターとしてのテレビの役割、第2にオープンスタンダードによるシームレスコラボレーション、第3にユーザー中心主義の推進――を挙げ、オープンな環境を整備することが重要であり、ユーザーフレンドリーな操作性を備えたテレビこそが、ブロードバンド・エンターテインメントの中心となると力説した。

 開幕日(9日)午前9時から講演した安藤社長は、映画「チャーリーズエンジェル2」に出演の女優・プロデューサーであるドリュー・バリモアやグラミー賞受賞R&Bデュオのメリー・メリーを舞台に招きながら、民生用デッキ型としては世界初のRWコンパチブルDVDレコーダー(DVD-RW/+RW/-Rディスクに対応)、記録メディアに8cmのDVD-RW/-Rディスクを採用した小型DVDハンディカム、24型の大型化に成功した有機ELディスプレーの試作機をはじめ、さまざまなソニー製品を紹介した。

■マイクロソフト、SPOT製品を発表

 開幕前夜の8日午後6時からラスベガスヒルトン・シアターで基調講演に臨んだビル・ゲイツ会長は、スピーチのなかでウィンドウズCE .NETやウィンドウズ XP Embededを搭載した家庭向け製品「Smart Devices(スマートデバイス)」を発表したほか、その延長線上にありハードディスクを搭載した携帯型マルチメディアプレーヤー「Media2GO」、そしてSPOTの最初の具体的商品としてインテリジェント腕時計を発表した。

 ゲイツ会長は、「SPOTは、これまで述べてきた『Smart』コンセプトの集大成だ」と語り、SPOT関連の腕時計開発に賛同するメーカーとして日本のシチズン、米FOSSIL(フォシル)、フィンランドのSUUNTO(スント)の3社を紹介、商品化は03年末の予定だと語った。

 第1世代機では無線LANなどを用いたIP網をサポートする予定はなく、FM放送のサブキャリアチャンネルを利用した単方向通信方式を採用する。天気予報、交通情報などを受信できるほか、ある特定のユーザーにだけデータを配信することもできる。

 CESにおいて韓国サムスンは、日本の家電メーカーを圧倒する出展規模を確保し突出していた。サムスンは、昨年のCESで63インチのプラズマディスプレイを出展したが、今年も他社に先駆けて世界最大の54インチ液晶ディスプレイを競合するシャープのブースに向けて挑発的に展示し、さらに完成度の高いブルーレイプレイヤーの試作機を示すなど技術力を強くアピールした。
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