店頭流通
<ショップの盗難防止事情>4 盗難防止IDで盗難品を追跡
2003/01/27 16:51
週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載
インテュイットが昨年12月から実施している「盗難防止キャンペーン」は、同社が発売する製品すべてに「盗難防止ID」を貼付するというもの。生産時にパッケージシートの内側から貼付し、出荷時にすべての製品を追跡できるようにした。
ショップは、在庫や販売時の確認用としてこのIDを利用する。在庫製品のIDと販売した製品のIDを常時管理することで、盗難発生時の即時確認と被害届の提出が迅速に行える。
ID番号は、盗難が発生した際、どの製品がどの店舗で被害にあったかを特定するために利用する。ショップが同社にメールや電話、FAXなどで伝え、盗難品を追跡する。
キャンペーンを実施したのは、ソフトウェアの主力マーケットであるショップでの盗難被害が顕在化しているから。ショップや消費者に対し、盗難防止を呼びかけるとともに盗難品不買の啓蒙が目的だ。同社のソフト盗難被害本数は1年間で500-800本だという。多くのショップでは、「高額なソフトほど被害件数が多い」という声があがる。
上原昌代・企画本部製品企画部弥生会計担当は、「盗難被害が大きくなればなるほど、ショップでは盗難を抑止しようと、空き箱展示販売に切り替え、商品を展示しないといった傾向が高い。商品展示コーナー自体の確保そのものが難しい場合もある」と語る。ソフトウェアメーカーにとって、ショップの盗難被害が死活問題につながりかねないという。
盗難防止IDは、1枚あたりのコストは7円程度。「コストが多少かかっても、ショップとの信頼関係を強めることが重要」としている。
また同社では、消費者に対し、盗難防止IDによって確認できた盗難品をウェブ通販やネットオークション、ショップなどで購入しないよう啓蒙活動を実施する。ウェブやショップで盗難防止IDを削除した製品を購入・転売しないことや、盗難によるIT市場が被る損害などについて、ホームページなどで情報公開を行う計画だ。
キャンペーンを実施することで、多少ではあるが効果が出てきたという。以前は、同社がソフトを発売した数日後に、仕切値よりも安い価格で販売しているケースがあり、明らかに盗難品を中古ショップなどに持ち込んだとみられる状況があった。このようなケースが発生した場合、稼ぎ時の年末年始商戦では、ショップとメーカーの双方がダメージを受ける。
だが、「昨年から今年にかけての年末年始商戦は、このようなケースがほとんどなかった」という。
同社では、「今後もIDを貼付する取り組みを続ける」構え。この盗難防止策は、地道ではあるものの、メーカーとショップが一体となって被害を抑止しようとする取り組みだといえよう。
ショップの盗難被害額は年々増えている。被害を少しでも抑えるためには、業界全体での取り組みが必要だ。確実な盗難防止策を早急に確立することが、パソコンおよび関連製品市場の拡大につながるのではないだろうか。(おわり)
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