店頭流通

動き始めた低価格パソコン 台風の目になるか

2003/01/20 16:51

週刊BCN 2003年01月20日vol.974掲載

 2003年、1つのトレンドとして、10万円を切る低価格デスクトップパソコンに注目が集まりそうだ。米国では中小パソコンメーカーが、小売り大手のウォルマートなどと提携し、200ドルパソコンを発売。ターゲットをパソコン上・中級者層に絞り込み、好調な販売を続けている。(三浦優子●取材・文)

 日本でも、米国並みに200ドルまではいかないものの、九十九電機と石丸電機が米イーマシーンズ製パソコンを4万9800円からという価格で販売し、順調に売れ行きを伸ばしている。また、NTTネオメイトがアロシステム、インテルと提携し、オリジナルブランドパソコンの販売を開始。モニタなしの最安値モデルで5万9800円の製品をインターネットサイトとエディオングループで販売していくことを発表した。

 大手メーカー製のデスクトップパソコンの単価は、昨年春にメモリ、液晶パネルなどの部材が上昇したことで、一時的に上昇した。その当時、販売店側では売れ筋製品の単価が上ったことを、「商品を購入する層が、初心者からパソコン習熟度レベルが高い層に移った。彼らは機能を吟味して購入しているため、高機能モデルを選択する傾向にある」としてユーザーの指向が低価格モデルから高機能な高額製品へとシフトしていると分析していた。

 だが、ここに来て一気に低価格パソコンが増加しようとしている。それも、02年春の時点で「高価格製品を選ぶ傾向にある」と販売店が指摘した中・上級者をターゲットとしてだ。実は、中・上級者をターゲットとしている低価格パソコンは、「2台目、3台目の需要を狙う」ことが目的だ。パソコンのスペックを比較すると、必ずしも最新のCPUを使っていなかったり、メモリ、ハードディスクの容量も少な目にすることで価格を押さえている。

 しかも、ほとんどの大手メーカー製品に搭載されている「マイクロソフト オフィス」を搭載していない。米国で発売されている200ドルパソコンは、価格を抑えるためにウィンドウズではなく、「Lindows」を載せる徹底ぶり。さすがに日本ではLindows搭載パソコンは登場していないものの、用途をある程度絞り込むことで価格を抑えている。これが、新たに登場した低価格パソコンの特徴なのである。

 これまでにも何度か低価格をセールスポイントにしたパソコンが登場してきた。しかし、単純に低価格であることをアピールするだけで、ここまで明確に用途を当て込んだものはなかった。その意味で、用途を限定して新たに登場してきた低価格パソコンは、パソコンの使い方が多様化したことで生まれた新たなカテゴリーだといえそうだ。果たしてこの低価格パソコン市場がどの程度まで拡大していくのか――。03年のパソコン商戦を占う1つのカギといえる。

 大手メーカーが2台目、3台目に購入されるパソコンとして、機能を抑えて低価格のものを提供し始めれば、低価格パソコンは1つのジャンルとして確立することになるだろう。今年の春商戦では、大手メーカーが低価格パソコンを用意しているわけではないようだが、イーマシーンズ、NTTネオメイトの製品が市場に定着していけば、状況は大きく変わっていくことになるだろう。03年の台風の目となるのが低価格パソコンの動向といえるのではないか。
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