店頭流通

“AV家電か、パソコン周辺機器か” ソニーの「コクーン」って何だ? 売り方を模索する販売店

2002/12/16 16:51

週刊BCN 2002年12月16日vol.970掲載

 ソニーのチャンネルサーバー「COCOON(コクーン)」が市場に登場してから、約1か月半が経った。ホームネットワーク製品の新しい形として、発売前から注目を集めていた。ソニーマーケティングは、「予想以上に好調で、生産が間に合わない状態」と話す。しかし、商品の位置づけが難しい。パソコン関連機器なのか、ハードディスク(HDD)レコーダーなのか。ショップの売り場をみると、パソコンの展示フロアと、HDDレコーダーやDVDレコーダーのフロアとで、展示方法が二分されているケースが目立つ。「コクーン」の店頭でのポジションはどこなのか。(木村剛士●取材/文)

■3つのコンセプト

 「パーソナライズ」、「アップグレード」、「ユビキタス」――。ソニーが謳う「コクーン」の3つのコンセプトだ。

 160GBのHDDを搭載し、約100時間分のテレビ番組などを録画できるが、3つのコンセプトが、単なるHDDレコーダーにとどまらない製品であることを示唆している。 それぞれの具体的な機能はこうだ。

 利用者の趣味・嗜好を「コクーン」が学習し、自動的に好みと思われる番組を録画する「パーソナライズ」。10分毎に「コクーン」がサーバーに自動的にアクセスし予約を確認、番組開始の10分前までであれば携帯電話などから録画したい番組の予約ができる「ユビキタス」。ソフトのバージョンアップをリモコンで簡単に行い「コクーン」を進化させられる「アップグレード」。

 この3つのコンセプトが生み出す機能はどれも斬新で、ソニーが「ホームネットワーク製品の新しい形」と位置づける製品に十分値する機能だ。

 しかし、ネットワークにつなげるということが、逆に商品の位置づけを難しくし、ショップによって扱い方に違いが見られる。パソコンと組み合せた提案をしているケースもあれば、HDDレコーダーとして記録型AV機器と同じフロアに置いているケースもある。

 「パソコン関連製品としても、HDDレコーダーとしても両方で扱える製品。しかし、中間的な製品だけにユーザーへの訴求方法が難しく、売り方を模索している段階。また、スタッフもAVとネットワークの両方の知識をもつ必要がある」とショップ関係者は語る。

■難しい店頭でのポジショニング

 これは、「ネットワークにつながる」ことからパソコン関連製品としての位置づけになり、一方で「本来の録画機能」からHDDレコーダーとの位置づけにもなるからだろう。これまでこのような製品がなかっただけに、店頭でのポジションがどこなのか、明確に表すことができないのだ。

 ソニーマーケティングの岩田真一・ネットワークプロダクツマーケティング部ネットワークプロダクツMK1グループマーケティングマネジャーは、次のように語る。

 「パソコン関連機器か、HDDレコーダーかと聞かれれば、どちらともいえる製品。新しいジャンルの製品なので、従来にない新しい展開をしていきたい。今は数は少ないが、ホームネットワーク製品は他社からもどんどん出てくるだろう。コクーンの品揃えも増やしていく。また、ショップ向けにはホームネットワーク製品を集めた新しい展示フロアの提案をしていく。ショップのフロア展開を変えられるようにさまざまな施策を行っていきたい」

 来年早々から「コクーン伝道師」という「コクーン」に精通した売り場担当者を、全国の販売店に数百人規模で育成して、利用方法を訴えていく。「まずは『コクーン』の利用方法や優位性をしっかり説明できる体制を作る」(岩田マネジャー)という。

 パソコンを介さないネット家電の波は今後確実にやってくる。ショップのフロア展開も当然変わってくるだろう。「具体的な施策はこれから」と話すソニーマーケティングが、「コクーン」をパソコン関連機器でもない、HDDレコーダーでもないネット家電として新しいフロアで売ることができれば、ネット家電の普及は加速するかもしれない。
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