店頭流通

タブレットPC、ついに発売 パソコン市場拡大なるか

2002/11/18 16:51

週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載

 タブレットPCが11月7日から順次、販売開始された。タブレットPCへの参入を表明したパソコンメーカー各社では、この新しい商材を切り口に顧客ニーズを吸い上げ、パソコン全体の潜在需要を掘り起こしていく構え。タブレットPCを顧客がパソコンを購入する際の選択肢の1つに位置づけ、デスクトップ機やノート機の拡販にもつなげていく作戦だ。まずは各社が得意とする市場領域をターゲットに据える。タブレットPCは、パソコン市場を再び活性化する“起爆剤”となるか。

まずは得意分野で拡販

 マイクロソフトの「ウィンドウズXPタブレットPCエディション」を搭載するタブレットPCの市場投入が、11月7日から順次始まった。

 タブレットPCの発売を表明した企業は、同日時点でハードウェアメーカー9社。発売日は、ソーテックと富士通が11月7日、東芝と日本エイサーが11月8日、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が12月中旬、ペースブレードジャパンが12月、ビューソニックジャパンが年内、NECが来年1-3月と各社各様。11月7日に新しく開発を表明した松下電器産業は、発売時期を今後詰める予定だ。

 ソーテックの中尾俊哉・執行役員営業本部副本部長マーケティングディレクターは、「まずは消費者向けに顧客を開拓する。コンシューマ市場でどのような顧客層が取り込めるかを模索し、流通商社との協業で企業向けへの拡販も図っていきたい」と話す。

 同社の山田雅彦・マーケティング本部マーケティング部長は、「コンシューマ市場では、年末までの需要はパソコンを使い慣れたビジネスマンなどが多いだろう。その購入者からタブレットPCの評価が口コミで広がり、一般の消費者にも認知されていくのではないか」と分析する。

 富士通の小林義法・パーソナル販売推進統括部第二販売推進部長は、「タブレットPCは、コンシューマ市場での立ち上がりが早いと判断し、年末商戦向けの発売日に合わせた。当社製品の使い勝手を認識してもらい、企業向け販売へとつなげていく」と強調する。

 東芝の山下文男・PC事業部長は、「年賀状を作成する需要を見込んで発売した。手書きでありながら印刷した年賀状や手書きメールが作成できるという、感情のこもったコミュニケーションがタブレットPCで実現できる。そうした利用法が浸透すれば、パソコン需要の拡大にもつながるのではないか」と期待。また、「法人市場では、まず医療や事故処理の現場といったニーズに応えていく」としている。

 法人需要を主力ターゲットに据える日本HPの挽野元・パーソナルシステムズ事業統括モバイルビジネスビジネス本部長は、「法人向けの販売を中心に、業務やモバイルノートの拡張版として、新規、リプレースの両需要を開拓する。具体的に業種を特定せず拡販していく」と意気込んでおり、「これまでデスクトップ機やノート機、iPAQなどで提案し切れなかった分野に販売したい。新しいラインアップとして、ビジネスチャンスが広がる」と強調する。コンシューマへの販売については、パワーユーザー向けウェブ販売サイト「hpダイレクトプラス」で対応する。

 年内に販売開始するメーカーが多いなか、NECでは年明け以降の発売を予定する。この理由について、NECソリューションズの百瀬裕也・クライアント・サーバ事業部長代理は、「業務で手に持って使うため、軽いことが最重要課題だと判断した。1キログラム以下の製品開発に時間を費やすため、来年以降の発売となった」と説明する。同社では、法人市場での販売に注力。店頭販売については、「検討の段階」という。

 各社がタブレットPC分野に乗り出すのは、既存のパソコン製品に新しいラインアップが加わることで、デスクトップ機やノート機の拡販も図りたい狙いがある。各社とも、「多様化した個々のニーズにどれだけ応えられるかで、新たなビジネスチャンスがつかめる」とみる。

 タブレットPCを起爆剤とすることで、パソコン市場全体を再び活性化することができるか。メーカーのマーケティング手腕が試される。
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