店頭流通
“買い物の季節”がやってきた! EC各社のボーナス商戦戦略を追う
2002/11/04 16:51
週刊BCN 2002年11月04日vol.964掲載
キーワードは「新規顧客」と「女性」
■ヤフー、「堅実な成長」目指す 販促を重視する楽天ヤフーの強みは、何といっても「利用者数の多さ」だ。第2四半期(7-9月)の取扱高は85億円で、前年同期の約2倍。このボーナス商戦も、同様の伸びを示すものと思われる。
同社ショッピング事業部企画室の小山泰之プロデューサーは、「国内3000万人のウェブ利用者のうち、約9割の2700万人が毎月1回以上アクセスする。利用者数の多さの割には、ショッピングの実売に結びついていない。とはいえ、現在の参加店舗数200店を急激に増やして質を落とすのも問題だ。国内のECは“ガンッ”と伸びるのではなく、じわじわ着実に伸びる市場だと認識すべき」と冷静に捉える。 ヤフーオークションは「激伸」したが、一方のECは「堅実な成長」を見込んでいる。
対する楽天は、「新規顧客と休眠顧客に対する販売促進」に重点を置く。 楽天市場編成部の牛山朋子部長は、「280万部のダイレクトメール配信数のうち、およそ6割が1か月以上、楽天で購入していない顧客が占める。この層を掘り起こすだけでも、大幅な売り上げ増が見込める」と、購入未経験者をターゲットにしていくと話す。
今年9月からファッション雑誌に匹敵するデザインが売りのHTMLメールの本格配信を始め、休眠顧客の“覚醒”に力を入れる。
新規顧客については、「ダイレクトメールを中心に、読者数を増やす施策を打つ。今はまだ280万部に過ぎないが、ここ数年で1000万部の達成を目指す」と、ダイレクトメールの“部数拡大”を通じて、購買者層への広告訴求効率を高める。
ウェブ利用者に対する楽天の広告訴求効率は5割と、ヤフーよりも低い。このあたりの差をどう縮めるかで、宿敵ヤフーとの力関係が変わってくる。
一方、共同購入(ギャザリング)と携帯電話を活用するネットプライスは、今年8月に過去最高の月商2億円を達成した。
昨年度(02年9月期)の年間売上高は16億円にとどまったが、「今年度は30億円を目指す」(佐藤輝英社長)と、2倍近い成長を見込む。
このボーナス商戦期には、月商2億円を超えるのは「ほぼ確実」(同)で、目標は「月商3億円突破」だ。今の路線で品揃えを拡充すれば、「今年度30億円は手堅い数字」と自信を示す。
売り上げを2倍近く伸ばすことで、経常利益も前年度比2倍の約2億円を見込んでいる。 ネットプライスの強みは、携帯電話経由での購買者が過半数を占める点にある。
月商2億円のうち、およそ1億2000万円を携帯電話経由で売りさばき、残り約8000万円がウェブ経由で売る。
販売形態も、価格を明示して販売する通常方式が全体の2割しか占めず、その他8割は、共同購入方式で売れる。共同購入とは、購入者同士で声を掛け合って、同じ商品を購入することで、単価が下がる仕組みだ。若者の間では、「ゲーム感覚で買い物ができる」と人気が高い。
佐藤社長は、「昨年度(02年9月期)までは、携帯電話ECと共同購入のビジネスモデルを確立する期間だった。今年度からは“売り上げ拡大期”に突入する」と鼻息が荒い。
ウェブだけでなく、昨年11月、角川書店と提携し、同社の雑誌『シュシュ』に共同購入方式による通販コーナーをつくった。
今年10月からは、角川の主力雑誌である『ウォーカー』シリーズ(東京ウォーカーなど)にも同ページをつくり、角川と収益を折半する。
売上構成比は、全体の4割強が財布や時計、アクセサリー、バックなどファッション系が占める。 2番手は、ダイエットや栄養補助食品などで3割を占める。
■女性向けECも堅調な伸び、冬商戦の目玉に難あり
女性向けEC最有力株のガールズゲートは、年商2億6000万円(03年3月期見込み)と、規模はまだ小さいものの、「ビューティセレブ」を切り口として着実に顧客数を増やしている。
和泉淳一社長は、「昨年度(02年3月期)は、『もうこれ以上伸びないんじゃないか』と弱気になったが、今年度に入り前年度に比べ平均30%増で伸び始め、手応えを感じるようになった。来年度は2倍強の6億円を目指す」と、強気に転じた。
ガールズゲートの強味は、美しい誌面(ウェブデザイン)づくりにある。 女性たちの憧れの的である「高級セレブリティ感」をうまく演出し、商品単価が高い商材に重点を置く。 このデザイン力が評価を得て、「コンテンツ制作」の受注が急伸した。 今年度2億6000万円の売り上げ見込みのうち、約5割がコンテンツ制作で占める。
もともとECが主軸のガールズゲートにとって、コンテンツの受託制作は、瓢箪から駒とも言える「ECの副産物」となった。 来年度(04年3月期)見込みの売上高6億円のうち、7-8割をコンテンツ制作が占める。
「大手企業から単発で1000万円、2000万円の仕事が目白押しで続く。地道に伸びるECビジネスに比べて、コンテンツ制作は一気に伸びた。しかし、われわれの本業は、あくまでもECビジネスにある。今年度から来年度にかけては一時的にコンテンツ制作が増えるものの、最終的にはECの売り上げを主軸に据えたビジネスモデルを目指す」と話す。
各社とも、季節商戦を経るごとにビジネス規模を着実に伸す。 だが、小売業全体から見れば、ECビジネスの比率はまだ小さく、今後、当面は前年比で最低でも150-200%の伸長率を堅持し、ボリューム感を出していくことが重要だろう。
しかしながら、「EC業界は、ここ数年、目新しい新規参入もなく、心なしか寂しい」(ヤフー・小山泰之プロデューサー)と、不安を抱えながら、未知の市場で暗中模索する様子も伺える。
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