店頭流通
揺れ動く家電流通業界 エディオンにデンコードー、サンキューが仲間入り
2002/09/30 18:45
週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載
経営体質にメスを入れられるかがカギ
ベスト電器、エディオンから離脱新5社連合は対等レベルへ
「エディオン」(東京都)は今年3月、デオデオ(広島市)とエイデン(名古屋市)が、両社の企画管理を主力業務に共同持株会社として設立した。そこにベスト電器(福岡市)、上新電機(大阪市)、ミドリ電化(尼崎市)の3社が加わり業務提携の基本合意を交わしたが、今回、経営方針の違いや商圏エリアが競合するという理由からベスト電器が外れ、エディオン、上新電機、ミドリ電化、デンコードー(仙台市)、サンキュー(福井市)の5社で最終基本合意に達した。この業務提携を組む5社の総売上規模は1兆800億円、総店舗数1259店の業界最大グループを形成することとなる。
チェーンストア業界の流通事情に詳しいダイヤモンドフリードマン社の豊田正弘編集局次長は、「チェーンストアでは、すでにイオングループとドラッグストアのウェルシアストアーズ、北海道のホームセンター・フォーマックなど、プライベートブランドについて共同仕入れで業務提携が進んでいる。家電流通業界もやっと対等レベルでの業務提携、コラボレーションの時代に入った」と評価する。
家電流通業界におけるグループ関係は、業務提携といかないまでも、5社連合発足以前からあった。今回、エディオングループ入りしたデンコードー、サンキューを中心に公開会社のマツモト電器、八千代ムセン電機など8社で形成している「MAXグループ」だ。
同グループは、店頭販売などの営業、販促手法についての共同研究が主な目的としており、まだ業務提携まで至っていなかった。これまで、この2社がMAXグループで中心的な役割を演じてきたが、エディオングループに入ったことで、MAXグループの結束力が崩れないか、懸念されるところだ。
5社連合による提携戦略は今秋から本格化するとみられるが、第一弾はメーカーとの協業による企画商品の開発となる見込み。すでにエディオンでは、ソニーを除く松下電器産業、東芝、日立製作所、シャープ、NEC、富士通など大手メーカーと共同で、メーカーブランド商品の企画開発を行っている。今秋に向けてエアコン、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなどの大型商品からヘアドライヤーに至る小物まで400アイテムに及ぶ商品をラインアップした。
しかし、大型家電量販店のメーカーブランド商品の企画開発は以前からあった。例えば、コジマが松下電器と組んで展開したエアコン「エオリア」だ。専用型番といわれるもので、一般の電器店での販売価格に比べ、コジマは2-3割安く販売していた。デザインを見る限りでは同一機種に見えるが、コジマで扱う商品は基本機能を網羅するも、2、3の機能を省いてある。型番の末尾にコジマの「K」がついているので、そこで区別がついた。
一方、エディオンの場合、コジマと逆のパターン。「市場での販売価格を同じにしておき、機能を追加した付加価値商品」(本谷祐一・エディオン経営企画部長)を目指している。
一般にオリジナル商品の企画、開発といえば、ストアブランド商品をメーカーに大量ロット発注することで仕入れ価格を下げ、低価格にして安売り競争を乗り切ろうという狙いがある。付加価値指向のエディオンの場合は、これとは全く対照的。エディオンの企画商品について「プレミアムPB(プライベートブランド)」と指摘する豊田編集局次長は、「逆に売れ残った時を想定したものではないのか。一般の商品よりも付加機能がついているので、安売りの目玉商品に使える」とみる。
今回の業務提携は商品の共同開発、共同仕入れの色彩が強く、課題がない訳ではない。それぞれ各社がもつ経営資源を共有し、経営の効率化まで進むことができるか。この点が大きなポイントであり、懸念材料でもある。
パソコン流通業界は消耗戦へ
グループ・系列化に拍車?
エディオンを持株会社に戴くデオデオ、エイデンや、上新電機の過去の経営状況をみると厳しい。デオデオ、エイデン、上新電機などはいずれも似た企業・経営体質をもっており、本紙で連載中の「PC販売店の体力測定」に登場する販売店のなかでも、経営効率は低い。こうした量販店同士が連携を組んでも、体質改善まで進むことができるか疑問が残るところだ。
ここで5社連合の2001年度の収益状況をみてみたい。ミドリ電化とサンキューは非公開企業のため、デオデオ、エイデン、上新電機、デンコードーの4社の単体ベースを合計した数値でみる。
それによると、総売上高は7294億円で前年度比8.7%減、売上総利益は1317億円で同9.9%減となる。売上高総利益率は18.07%と標準的な粗利益確保だが、販売管理費は、1349億円で前年度に比べ2.4%しか低下しておらず、粗利益を上回ってしまう。販管費の売上高対比は18.50%で、抑制できていない。営業損益は31億円のマイナスで、前年度の79億円の黒字から一転している。営業外収益として販促協賛金60億円が加わり、何とか経常段階で25億円の黒字(売上対比0.35%)を確保しているが、前年度の126億円の黒字からみると、利益は大幅に減少している。
ある大手メーカーの首脳が指摘する。「昨年秋から業務提携の話が出ていたが、いっこうに戦略が見えてこない。誰がリーダーシップを執っていくのか、はっきりしない」。また、「これらグループ各社には販促支援費、協賛金など結構な金額を払ってきた。大量に仕入れるという理由で、これまで以上にリベートを要求してくる可能性が高い」とも指摘する。
家電パソコン流通業界は、ヤマダ電機、ヨドバシカメラといった大型量販店の出店攻勢が激しく、体力消耗戦の様相を帯びている。今後もさらに厳しい状況が続くとみられ、大型家電量販店といえども、独自路線の展開が難しくなってこよう。
こうした厳しい環境のなかで、今後、クループ化や系列化がさらに進むと予想される。しかも、単なる合従連衡でなく、経営体質の強化まで踏み込んでのコラボレーションが求められるようになろう。
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