店頭流通
ソニー、「コクーン」発表 ネット家電の新しいかたち
2002/09/16 18:45
週刊BCN 2002年09月16日vol.957掲載
活気づくか、ホームエンタテインメント市場
■常時接続が前提コクーンは、「COnnected COmmunity On Network」の頭文字の組み合わせとともに、本来は「繭」という意味をもつ。「蜘蛛の巣」を意味するウェブを意識した表現といえる。
命名の理由についてソニーでは、「ネットワークを通じて、よりきめ細かなサービスを提供するという意味を込めた」と説明する。今後は、ホームAV(音響・映像)ゲートウェイ製品群の総称として、これを採用する考えだ。
コクーンの特徴は、名前に込められたようにその「きめ細かさ」にある。
160GBのハードディスクを搭載。ここに100時間分のテレビ番組などを録画できるが、単なるハードディスクレコーダー機能だけにとどまらず、「ユビキタス」、「パーソナライズ」、「アップグレード」という3つの観点から機能を強化している点が特徴だ。
例えば、ユビキタスでは、携帯電話やノートパソコンからの録画予約ができる。常時接続型を目指したゲートウェイ製品のコクーンは、月額300円の契約を結べば、10分間に一度、コクーンがサーバーにアクセス。これで番組開始の10分前までであればどこにいても番組予約が可能となる。無料契約でも、1日2回サーバーにアクセスするため基本的には12時間前であれば外部からの予約が可能と考えていい。
また、パーソナライズ機能では、利用者が録画する番組の傾向をコクーンが自動的に学習。それに応じて、録画予約をしなくても、コクーンが自動的に好みと思われる番組を録画してくれる。撮り忘れたと思った番組もコクーンが、自動的に録画してくれるというわけだ。
さらに、アップグレードの代表的機能としては、ソフトウェアのバージョンアップがある。これも、ネットワーク接続を実現していることから可能になる機能で、「これによって、進化するテレビが初めて実現できる」(安藤社長)。
■新たな潮流になるか
コクーンは、ブロードバンドによるホームエンタテインメントの世界を現実のものにする第1弾製品である。同時に、同社が掲げる4つのゲートウェイ製品のうち、バイオ(パソコン)、プレイステーション(ゲーム専用機)、モバイル(携帯電話、PDA)という3つに続いて、いよいよ最後のベガ(テレビ)でもネット接続を可能にしたという意味をもつ。
とくに、テレビ、ビデオの領域は、今年から来年にかけて、液晶化、ハードディスク化という新技術への変わり目に入りつつある。
「大型家電商品が相次いで転換期にさしかかっている。これは過去に例を見ないビジネスチャンス。買い換え促進のためには新たな提案が不可欠」(松下電器産業)として、ネットワーク接続はその重要な切り札となっている。
ソニーでは、テレビに続いて、AV商品とのネット接続を前提としたコクーンの投入も予定しており、ブロードバンドホームエンタテインメント戦略を加速することになる。
家電メーカー各社は、ブロードバンド時代を見据えた家電製品の投入を掲げているが、ネット接続にフォーカスした結果、操作を難しくしたり、決定的な利用提案が行えないままだった。
だが、ソニーのコクーンは、それを初めて打開したネット家電商品ともいえる。実売13万円という価格帯は、まだ先進ユーザーを対象とした需要だけにとどまるだろうが、ネット家電の潮流に向けて大きな一歩になったことは間違いないだろう。パソコンを不要としたITの世界が、携帯電話に続き、さらに広がろうとしている。
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