店頭流通

店頭流通を制するのは大手だけ? ソフトメーカーの販売提携急増

2002/09/09 18:45

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 パッケージソフトメーカー同士の提携が急増している。1社が複数企業の製品販売を請け負ったり、販売面で提携する動きが目立つ。

 ヒット商品を作るには、販促費をかけ店頭で大規模なアピールを行う必要があるものの、単価数千円のソフトに多大なコストはかけられない。そこでソースネクストのように製品ラインアップを増やし、ソフト1タイトル当たりの販促費を引き下げるやり方が主流になりつつある。ソフトメーカーからは、「パッケージ市場は大手の寡占化、売れ筋商品の限定化が進んできた。今後その傾向がさらに強まり、勝ち組、負け組の差が激しくなるのでは」との声が出ている。ソフトメーカー同士の提携が急増した背景を、あるソフトメーカー社長は次のように説明する。

 「商品数、メーカー数がこれだけ増えてくると、ソフト卸業者に販促能力を期待しても無理。メーカー自身が店頭で販促を行わなければならない。だが、セキュリティソフトや一太郎、マイクロソフトのオフィスなどの人気商品ならともかく、それ以外の製品については、単価数千円の商品にそう多額のコストをかけられない。店頭で充実した販促活動を行っていくことが、1社の事業規模では難しい時代に差し掛かった」

 他社が開発した製品の販売を請け負い、商品数を増やし、強力な販促活動により業績をあげているのがソースネクスト。ソフトタイトル数を多く揃えることで、製品ごとの売れ行きの差をカバーするとともに、販促費の効率利用を狙う。同社の松田憲幸社長は、「最近ではソースネクストというブランドイメージが、ユーザーに大きな信頼感を与えることにつながっている」と自信を見せる。

 競合メーカーも、かなりソースネクストを意識している。インターネットシステム開発のオン・ザ・エッヂは、電子メールソフト「ユードラ」を販売し、好調だったことから、本格的にソフト市場に進出を決定。現在、販売するソフトのリクルート活動を進めている。

 オン・ザ・エッヂの堀江貴文社長は、ソースネクストの手法を意識していることを認めたうえで、「分野を問わず、商品を揃えていく」と、パッケージソフト事業進出に大きな意欲を見せる。

 アイフォーは、7月12日にイーフロンティアとマーケティング分野における協業を行うと発表。協業第1弾として、企画・発売をイーフロンティアが、販売をアイフォーが担当する「ビデオホームページNinja for Windows」を8月16日に発売した。

 メガソフトは、新たに設立したライフボートに出資するとともに、神戸のソフト開発会社夢工房と販売面で提携。「ライフボート製品のうち、コンシューマ向けのものは当社が店頭販売を行い、夢工房が学校向けに販売している栄養相談、献立作りソフトのパーソナル版を当社が販売する」(メガソフト・前坂昇社長)と、販売する商品の数を増加させる。

 こうした各社の動きを見て、「商品数を増やしたからといって、成功できるとは限らない。いたずらに商品数を増やしても、結局はうまくいかないのではないか」と否定的な意見を出すソフトメーカー関係者もいる。

 「ブランドイメージを認知させただけでは、ユーザーを獲得することはできない。商品認知度を向上させていくことが必要」というのがその理由だ。

 その一方で、「すぐにというわけではないが、提携を検討すべき時期に入った」と、ソフト販売のビジネスモデルが大きく変化していることを認める企業もいる。

 同社では、「卸業者が在庫負担を恐れる余り、商品が売り切れても追加注文がほとんどない。メーカー自身が仕掛けて売り上げをアップする努力ができなければ、商品認知度の向上も何もあったものではない」と現状に危機感をもち、提携による活路を模索する。

 パッケージソフトメーカーの寡占化は従来からあったものの、販売提携が進むことで今後さらにその傾向が強まることになりそうだ。
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