店頭流通
変わる秋葉原電気街 エンタテインメント性が強化
2002/08/26 16:51
週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載
集客数増加の可能性大
■中央通りがエンタテインメント街に、CDやDVD、ゲーム関連が中心秋葉原電気街の中央通りは、ヤマギワソフト館をはじめ、カクタソフマップ、ソフマップ本店アミューズメント館、メッセサンオー本店など、CDやDVD、ゲーム関連のソフトを販売する店舗が多い。
ソフマップでは、ヤマギワソフトのソフト関連事業の営業権を譲受。秋葉原地区で5店舗が販売チャネルとして増えることになった。
総合企画部・広報IR室・松田信行室長は、「中央通りの店舗が増えることによる販売増の相乗効果が図れる」としている。
今年度は、ソフト関連事業で約380億円規模の売上高を見込む。来年度は、500億円以上の売上高を目指し、ソフト関連事業でトップクラスの売り上げ確保を狙う。
また、中央通りでは、ラオックスが今年6月で撤退した「T・ZONE.ミナミ」と、8月で撤退する「ミナミ無線電機」が入店していたビルを一棟借り切り、売り場面積約5000㎡の大規模な「総合エンタテインメント・ショップ」を今年10月にオープンする。
ラオックスの広報室・山下厳部長は、「この場所は、比較的マニア層が密集する地域といわれている。そのため、ホビーを中心としたショップをオープンすることになった」としたうえで、「当社では、各分野の専門店を設け、それぞれトップシェアを見込めるほどの大型店を擁している。だが、ホビーに関しては、大規模な店舗がなかった。新店舗により、トップシェアを獲得できる体制が整った」と強調する。
新店舗では、約50人の社員と約160人のアルバイトを揃える。初年度の売上高は、約100億円を見込む。
もっとも、業界関係者のなかには、「ほかの競合店と比較して、かなり大規模な店舗なので、収益性が図れないのではないか」といった見方もある。
これに対しラオックスでは、「確かに賃貸料は決して安くない。しかしホビーはパソコンと比べると手離れがよく回転率も高い。商品1つとっても、高過ぎず安過ぎないという手頃な商材だ。また、ホビーなどの商品知識に詳しい人材は比較的若い世代が多い。新店舗の店員としてそれらの人材を活用すれば人件費を抑えることができる。今回の新店舗は、高い収益性やコスト削減が図れる面を考えると、十分に採算が合う」(山下部長)とし、早い段階で単年度黒字が見込めることを示す。
ラオックスは、すでに秋葉原で「ザ・コンピュータGAME館」や「HOBBY館」、「楽器館」などでエンタテインメント性が高い商品の販売ノウハウを積み重ねてきた。
新店舗がオープンすることで、展示アイテム・展示量・提案性などの面で他店を凌駕する大型エンタテインメント総合店としてビジネス拡大を図る構えだ。
このようなソフマップとラオックスの取り組みにより、秋葉原中央通りの一角が「エンタテインメント地域」として定着しそうだ。
■秋葉原駅周辺の再開発で新たな集客に期待
秋葉原駅の近くには、ヨドバシカメラが2005年をめどに出店を予定する。 また、東京都は「秋葉原地区まちづくりガイドライン」を策定し、06年2月をめどに、駅周辺に「秋葉原ITセンター」の設置を計画している。
IT電化製品などの新商品を展示する「ショールーム」や、映像設備や情報受発信機能を備えた「コンベンションホール」などで秋葉原地区の集客数を高める。
また、大学院やプロフェッショナル教育センター、起業センター、地域企業向けにリアルタイムで技術や商品の情報発信を行う施設などを設置して、新産業の創出や人材育成の拠点にしていく。
ラオックスの山下部長は、「ITセンターの稼動で、1日の秋葉原駅利用者が1割弱増えるといわれている。だが、新店舗はITセンターの近くではない。そのため、特徴がなければ、せっかく増えた秋葉原の集客数を収益につなげることができない。今までのボビーショップにはなかった特性を前面に押し出していくことが重要だ」とみている。
新店舗では、ホビーを中心にゲームやCD/DVDソフト、書籍、玩具、模型、ロボットなど10万点以上を揃える。さらにモデルガンを射撃できるスペースや、ロボット同士で対戦できるスペースを用意し、消費者が体感・体験できるコーナーを設置する。
「マニアだけでなく、父親と子供の家族連れなども楽しめる店舗作りを目指す」(山下部長)という。
ソフマップでは、ヤマギワソフトの店舗で、従来の新品DVDソフトやパソコンソフト、テレビゲームソフトの販売に加え、ソフマップがもつ中古ソフト売買のノウハウも取り入れた。
松田室長は、「ヤマギワソフトの知名度とソフマップの中古販売のノウハウを加えることで十分な差別化になる。ヤマギワソフトの固定客だった層に加え、新規顧客も期待できる」と話す。
秋葉原電気街は、「部品の街」から「家電の街」、その後「パソコンの街」へと大きく変貌を遂げてきた。
だが、現在は主流商材であるパソコン本体が前年割れをしている状況だ。パソコン販売は、用途提案や収益性が高い商材と合わせて販売できるような体制を作ることが重要となる。
中央通りの一角を「エンタテインメント地域」として定着させる取り組みは、メインカルチャーのパソコン販売だけでなく、ホビーやゲーム関連ソフトなどのサブカルチャーをメインカルチャーに変えることにつながる。
これまでのハード一辺倒からエンタテインメント系ソフトにシフトした店舗が集まることで、集客力が高まり、収益増につながるビジネスになる可能性が高い。
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