店頭流通
バイオのマーケティング “地を這う”営業を展開
2002/06/17 18:45
週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載
パソコン市場全体が、厳しい状況にあるなかで、ソニーは安定的に30%台の高いシェアを維持。
競合他社の関係者は、「バイオはソニーのブランド力で売れているだけ」との考えが根強いが、意外にソニーの地域営業の粘り強さは目を見張るものがある。
逆に、これまで地域営業に強かったはずのメーカーの動きが鈍く見えるほどだ。
展開地域は、(1)ヨドバシカメラとソフマップが陣地を構える梅田、大阪駅周辺、(2)上新電機とニノミヤが陣地を構える日本橋周辺、(3)ソニータワーがある心斎橋――の計3か所。
期間中、「バイオ」のロゴを輝かせながら走る宣伝用の大型トレーラーが梅田→心斎橋→日本橋を幾度となく往復する。
この大型トレーラーは春商戦の名古屋でも活躍した。名古屋では、トレーラーに加えてバイオロゴを大きく貼り付けた飛行船も飛ばしたが、春の強風にあおられて不時着するというハプニングもあり、今回は空からの訴求はない。池戸亨副社長は、「地域営業は地面を這うのが基本」と苦笑いする。
そのほか、地域情報誌「関西ウォーカー」やテレビ広告、交通広告などを打つが、基本は確実に実売に結びつける販売促進にある。
さらに、期間中のテレビ広告では、梅田地区と日本橋地区の販売店3-4店舗の店員が出演し、「テレビ録画もできるバイオなら当店へ!」などと、一言キャッチを話す。
電波媒体や雑誌・交通広告で盛り上がった顧客を捕まえるのは、ソニーの大阪集中販促に賛同した上新、ソフマップ、ニノミヤ、ヨドバシなどの店舗だ。これらの店舗内では、恒例の「バイオフェア」を開く。販売店の持ち出しで店内にバイオ専門のブースを開き、「あれやこれや」とバイオの用途を提案する。
98-99年頃までのパソコンが右肩上がりを続けていたときは、NECや富士通も「バザールでござーるのお猿さん(NEC)」や「タッチおじさん(富士通)」などのキャラクターを使い、同様の地域集中型のイベントを全国各地で展開していた。だが、最近は、めっきり数が少なくなった。
一方で、ソニーは「ブランド」という強力な武器を駆使しつつも、その一方で非常に泥臭い地域営業に力を入れている。
バイオマーケティンググループの中牟田寿嗣統括課長は、「そりゃ、予算があれば、全国7大都市で同時に販促を打ちたい。だが、利幅が少ないパソコンでそこまでは無理。地域ごとの販促ではしっかり目標を達成し、投資対効果の帳尻を合わせる」と、限られた予算のなかで目標を立てて地道にやっている。
今回の大阪集中販促では、地域エリア内で5-10%のソニーシェア拡大を狙う。中牟田課長は、「こうした大々的な販促を打てば、当該地区のパソコン全体の販売数量が10-20%は伸びる。販売店には伸びた分の半分をバイオに割り当ててもらいたいとお願いしている」と話す。
販売店としても、バイオだけのために身銭を切ってバイオフェアに協力するわけではないので納得しやすい。
池戸副社長は、「6月に入ってからも、夏商戦の動きが鈍すぎる。商戦が短期化しているだけに気がかりだ。とはいえ、ヤマ場は7月一杯まで続く。場合によっては8月のお盆まで戦う覚悟。当社の夏モデルの充足率も100%とは言えず、出荷が遅れていることを考えれば、本番はこれから」と意気込む。
なかなか儲からないコンシューマパソコン事業で、カネとヒトを投入して地域営業に力を入れるのは、あるいは世の趨勢に逆行しているのかも知れない。
だが、パソコンが売れない今だからこそ、販売店の協力を得つつ、“地を這う”営業が必要なのではないだろうか。
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