店頭流通
第8回E3、米ロサンゼルスで開催 ゲームはオンラインが主流に
2002/06/03 16:51
週刊BCN 2002年06月03日vol.943掲載
韓国勢力の拡大と中国の伸長
●競争激しいゲームメーカー、各社、自信作を出展E3の会期中、ガラス張りのLACCにはカリフォルニアのまぶしい日差しが降り注ぎ、初夏のようなさわやかさだった。だが、展示会場に一歩足を踏み入れると、派手な電飾と音響がとどろき、ゲームメーカー、デベロッパー、パブリッシャーなどが最新の製品を展示、激しく競い合うゲームのスタジアムと化した。
プレイステーション2(PS2)、Xbox、ゲームキューブの各コンソールとパソコン向けに、年内発売予定を中心とする約1000タイトルの新作が発表されたが、今年はパソコンゲームだけでなくコンソールもオンラインに移行する年になり、各ゲームメーカーは対戦ゲームに力を入れた。
ネットワーク化にとくに熱を入れるマイクロソフトは、今秋から開始予定のオンラインサービス「Xbox Live」を発表。これは、「ゲーマータグ」と呼ばれるIDを使ってログインし、マイク付きヘッドセットの「Xboxボイスコミュニケータ」を通じて、プレー中にほかのプレイヤーに話しかけたり、ハードディスクに新しいゲームのシナリオやキャラクターゲームをダウンロードできるサービス。Xbox Liveのスタート時に約5タイトルを専用ソフトとして投入し、2003年末までに全世界で50タイトル以上を発売する計画。専用キットは米国では49.95ドルの予定。
一方、オンライン環境を着実に整えているソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)は、PS2のオンライン版として、「auto modellista」(カプコン開発)、「MADDEN 2003」(エレクトリックアーツ開発)、「FFXI(Final Fantacy XI」(スクウェア開発)、「SOCOM」(SCEI開発)などを出展、オンラインゲームを体感しようという入場者で混雑した。
任天堂もキーボード付の新しいコントローラとともに、オンラインゲームサービスを発表。例年どおり、SCEIに劣らぬ巨大ブースを設置し、ゲームキューブを使ってオンラインでのプレーができる「Phantasy Star Online I&II」を展示した。
そのほか、仏ゲームパブリッシャーのUbiソフトエンターテインメントが、世界で1100万本を販売した大ヒット作「MYST」のオンライン版のリリースを発表したように、スタンドアロン向けに開発された旧タイルトのオンライン版が開発される傾向にあり、オンラインへの2次利用が活発化しようとしている。
●勢いを増す韓国・中国勢、中国市場は世界最大規模に
今回は韓国企業の勢力拡大も目立った。サムソン電子系のグラビティーは大ブースを設け、01年末からサービスし、すでに韓国で190万人のユーザーを抱える人気のロールプレイングゲーム「Ragnarok Online」を出展。韓国のオンラインゲームメーカー、ファンタグラムも単独ブースで出展した。ジャパニメ風の可愛いキャラクターが活躍するMMORPG(Massively Multiplayer Online RPG=多人数同時参加型ネットワークロールプレイングゲーム)の「シャイニングロアオンライン」のほか、Xbox版「Kingdom Under Fire the CRUSADERS」、第3次世界大戦後の世界を舞台にしたXbox用3Dアクション「STRIDENT」などを展示した。
韓国のCG・ゲーム制作会社のデジタルドリームスタジオも単独ブースを設け、オンランイゲーム「Ark-On Line(Dusk of Ruins)」やPS2/Xbox用ゲーム「Fantasy of Kingdom」などを出展し、制作技術の高さを示した。
業界統計によると、01年の韓国のゲームソフト市場は総合計24億ドル。内訳は、①インターネットカフェ(PCバン)=12億4600万ドル、②アーケードゲームルーム=5億4500万ドル、③アーケード=2億2100万ドル、④オンラインゲーム=2億5400万ドル、⑤PCゲーム=1億4500万ドルとなっている。
E3では、中国の市場についても報告された。中国最大のオンラインゲームポータル(http://www.17173.com/)を運営するネットドラゴン・ウェブソフトのデジャン・リュウ会長兼CEOは、「盛況な中国のインターネットゲーム市場」と題して説明会を開き、中国のオンラインゲーム市場について独自調査を発表した。
それによれば、3370万人の中国のインターネットユーザーのうち200万人を超す人がMMOG(Massively Multipla yer Online Games)をプレーし、その市場規模は1億ドルを超えている。現在、中国には30種類近くのMMOGがあり、これらの約半分は韓国製。00年には2種類、01年には16種類だったことから、急成長していることが分かる。台湾を含めて、中国製のオンラインゲームのシェアは40%と半分以下になっている。
今後5年間、年率50%増の成長が見込まれており、5年後には中国のオンラインゲーム市場は世界最大規模になると予想した。こうした背景のひとつとして、「中国にはコンソールというものはない。ゲームはみんなパソコンを使って楽しんでいる」(リュウ会長兼CEO)ため、インターネットが実質上ゲームソフトの流通網になっていることがある。
また、米ベンチャー企業のエボリューション・ロボティクスが、ノートパソコンを高性能ロボットに変身させられる「パーソナル・ロボット・システム」を出展して人気を集めた。その名も、「ER1(Evolution Robotics 1)」。
ER1のソフトウェアは、ウェブ用カメラで捉えた画像を毎秒5フレームで処理し、視覚データのライブラリに保存されている情報と合致させて認識する。一般的なロボットは、プログラミングされた作業・動作しかこなせないが、ER1は即座に周囲の環境に反応できるのが特徴だ。
今回のE3では、これまでゲーム機の主導権を握っていた日本勢にくわえて、韓国や中国企業が台頭するなど、アジア勢の元気の良さを見せつけた展示会だった。
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