店頭流通
PC販売店、商材調達で優勝劣敗 在庫リスク回避に乗り出すメーカー
2002/05/27 16:51
週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載
片岡社長は、「昨年の冬商戦で、まとまったコミットを獲れたのは1社だけだった。だが、この春商戦以降すでに5社からコミットが獲れ、今後も増える」と、大手販売店がNECパソコンの販売台数を担保する動きに自信を示す。
主なコミットの方法は、(1)1-2社のメーカーにしかコミットしない、(2)複数のメーカーに最低レベルのコミットをする――の2つ。特定のメーカーに対し10万台単位のコミットをすれば、販売店の在庫リスクは極めて高くなる。これに対して、メーカー側は売れ筋商材を含め、確実に納品してくれる。一方、コミットメントレベルが低い販売店に対しては、納品台数を保証してくれない。
「確実に売れる分しかつくらない」(片岡社長)のは、NECだけでなく、ソニーやほかのメーカーも同じ。販売店にコミットを求めることで、メーカーはより正確な生産台数を割り出し、在庫リスクを事前に回避する考え。コミットをしないと、販売店側はリスクを減らせるが、限られた生産台数を巡り、商材獲得競争で苦労することになる。
片岡社長は、「いったんコミットした台数については、たとえ売れ残っても絶対に価格補填しない。そのかわり、売れ筋を含め、確実に納品する。販売店は“売る”だけでなく、どれだけ売れるかという“市場予測”の機能も担って欲しい」と強く要望する。
しかし、コミットできる体力と市場予測能力を持ち合わせた販売店は、数が限られてくる。 勝ち組と評されるビックピーカンの安積克彦社長は、「売る力がある販売店に商材を持ち込んだほうが経営効率がいいに決まっている。生産を絞り込んでいるときは、きっちり台数を売り切る販売店に商材が集中するのは自然な流れ。在庫リスク、銀行からの取り立てリスク、新規出店リスクを負いながら努力している」と話す。
一方、経営再建に取り組むT・ZONE.の横山隆俊社長は、「NECのパソコンは取り扱わない。ヨドバシカメラやビックピーカンと同じパソコンを扱っても負けるだけ」と言い切る。同社が250億円の在庫評価損を出した1996年当時から在籍する幹部は、「メーカーに大量に商材を突っ込まれてからおかしくなった。突っ込むだけ突っ込んであとは知りませんでは困る」と恨み節を吐露する。
NECは、これまで“広く遍く”パソコンを流通させてきた。だが、今回のコミット制度は、優先的な選り分けを進めているかに見える。この点について片岡社長は、「量販だけを優先するわけではない。規模を追求する販売店、付加価値を追求する販売店の両方と、きちんと取り引きする。『互いにリスクと利益をシェアしましょう』とお願いしているだけ」と強調する。
依然として商品サイクルが短いパソコンは、在庫リスクが極めて大きい商材だ。この点で家電とは明確に性質が異なる。「夏商戦は台数で前年比横ばい程度だろう」(片岡社長)。パソコン販売台数の頭打ちが続くなか、利益確保に向けて、これまで以上に販売店とのリスク共有が進むものと見られる。
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