店頭流通

「玄人志向」に「挑戦者」登場 専門店の自作パソコン需要狙う

2002/05/06 16:51

週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載

 自作部品ベンダーの「玄人志向」と「挑戦者」が、自作パソコンに傾注する専門店との関係を強めている。これまで自作パソコン用の商材は、「バルク=ばら荷」と呼ばれるブランド力がない部材が中心だった。しかし、玄人志向や挑戦者らは“部材”にブランド力をつける独特の手法でシェア拡大を目指す。パソコン専門店は、家電量販店やカメラ量販店に対抗するため、専門特化の道を進む。T・ZONE.は5月31日に開店する新店を自作パソコン中心の店構えにし、グッドウィルは自作パソコン専門館を4月末にオープンした。有楽町ソフマップも、「熟年層に自作パソコンが広がりつつある」と手応えを感じる。玄人志向らはこうした専門店の動きに乗じて販路拡大を狙う。

 自作パソコン市場は、新しいCPUやグラフィックスボードが登場すると盛り上がり、そうでないときは低迷する。年間を通じてみると「前年並みが続く」(玄人志向・二松光主幹)飽和市場である。だが、実際には多くの専門店が、自作パソコンや美少女ゲーム、中古パソコンなどの商材に力を入れる。

 この背景には、ヤマダ電機やカメラ量販店の台頭に加え、対ヤマダ統一戦線を標榜するエディオンおよび、同社を軸とするNEBA5社連合など、巨大量販店の拡大がある。

 専門店関係者は、「家電量販店が扱いにくい上級者向け自作パソコンや、マニア向け美少女モノを拡充することで専門店の特色を出す」と、戦渦に巻き込まれにくい道を選ぶ。

 この波にうまく乗ったのが玄人志向だ。昨年夏ごろから頭角を現し、ビデオボードを中心に、昨年度(02年2月期)は15億円を売り上げた。営業利益は8000万円を確保。今年度(03年2月期)は、拡張ボード類に加え、マウスやキーボード、ケーブルなどサプライ商材に手を広げ、売上高35億円、営業利益2億円を目指す。すでに、専門店を中心に70社300店舗に玄人志向ブランドの商材を並べる。この4月末から、ヤマダ電機の一部店舗でも取り扱いを始めた。

 これをみて驚いたのがアイ・オー・データ機器のアイ・オープラザアキバ(秋葉原営業所に相当)だ。同じ東京・秋葉原に拠点を置く玄人志向の急成長に地団駄を踏んだ。だが、年商30億円そこそこの玄人志向の動きだけでは、アイ・オー本社(石川県)は動かない。

 そこで立ち上げたのが、同営業所独自のブランド「挑戦者」だ。77年生まれ、入社3年目の若手社員・九鬼隆則氏が主幹となり、予算は同所の増田憲泰所長が責任を負う。ウェブを使ったサポートなど、玄人志向を強く意識している。

 九鬼主幹は、「本社資材部と生産管理課に、挑戦者チームが企画した商品の量産をお願いしているが、これがなかなか難しい。これまで実現したのは7000円のハードディスクケース100台だけ。次の新製品は、早くても5月下旬になる」と、300点近い品揃えを有する玄人志向を前に苦い表情。一方、玄人志向の二松主幹は、「挑戦者に頑張ってもらわないと、叩き潰す快感が味わえない」と皮肉たっぷりに声援を送る。

 玄人志向と挑戦者だけで市場が回復するわけではない。だが、話題づくりは重要だ。実際、玄人志向の登場で、挑戦者が生まれ、ほかにも追随する動きが起こりつつある。専門店も、「上級者の心をつかむ商材が増えればいい」と総じて歓迎する。アイ・オー本社でも、買い替え需要が主流になった今、より中・上級者の需要を捉える必要がある。

 果たして玄人志向や挑戦者は、一大波紋を巻き起こせるか? それとも在庫の山を抱えることになるのか?
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