店頭流通

PC単価、上昇の兆し 販売店、5月が正念場?

2002/04/08 16:51

週刊BCN 2002年04月08日vol.936掲載

 

最大で3万円値上げも

 2002年は、店頭でのパソコン単価が上昇していくことが確実となった。3月後半からメーカー各社が製品の値上げに動き出しているからだ。先陣を切って、3月21日にアップルが液晶iMacを2万円値上げすると発表。4月27日に発売されるソニーの「バイオW」新モデル4種は、実売で2万円程度の値上げとなる。富士通、NECも今後発売する製品について値上げを検討しており、各社の新製品が出揃う5月には平均単価が2万円以上上昇するのは必至。パソコンの売れ行きが依然として厳しいなか、価格の上昇は販売店にどのような影響を与えるのか。

●2-3万円の値上がり

 パソコンの単価は、昨年から少しずつ上昇を続けてきた。00年は10万円以下の低価格パソコンが人気だったが、01年は液晶ディスプレイやマルチドライブを備えた20万円台の高機能製品が人気を集め、売れ筋上位から10万円以下の製品が姿を消した。

 02年1月から3月までの3か月間を見ると、2月は1月に比べわずかに上昇した単価が、3月にはやや下がっているものの、ノート、デスクトップともに18万円台の単価となっている。ノートの単価はやや下落傾向にあるものの、デスクトップパソコンについては単価が高くても高機能の製品に人気が集まっている。

 これは、パソコンを購入する層が、初心者に代わり、2台目、3台目のパソコンを購入するユーザーにシフトしつつあることに起因するといわれている。販売店としても売り上げ増加につながるとして、20万円台の製品が人気を集めていることを歓迎してきた。

 だが、近く訪れるであろう平均単価の上昇は、メーカー側の価格値上げが原因。

 すでに発表を行っているソニー、アップルに続き、富士通、NECでも「現行製品を値上げする予定はないが、5月に発売する新製品については、液晶、DRAMの値上がりと円高により、値上げすることになるだろう」と話す。

 値上げ幅は、「現在調整中」としているが、およそ2―3万円程度の値上げとなる見通しだ。現行製品の価格引き上げではないため、「お客様に(値上げした分だけの)付加価値を認めてもらえるような製品としたい」(NEC)という。

 しかし、市場が冷え切っている現状で、ユーザーがこれをどこまで受け入れるのか。短期的には買い控えが強まる公算が大きい。

●懸念される買い控え

 買い控えが進めば、販売店にとっては大きな打撃となる。売れ行きは今年に入っても依然として前年割れを続けており、これに買い控えが重なれば、販売店の収益はさらに悪化することになる。

 ある販売店関係者は、「オーバーストアが続いた。これから淘汰が始まっても不思議はない」と表情を曇らせる。

 しかし、メーカーも厳しい状況にある。液晶、DRAMと部材の値上がりが続き、さらに円高が追い打ちをかける。

 大手メーカーによれば、「15インチ液晶パネルの単価は、昨年の安い時には210ドルだったが、現在では270-280ドル。部材ベンダーの強気ぶりを考えると、300ドルまで上がることは覚悟しなければならないだろう」と、さらなる部材価格の上昇に懸念を示す。

 つまり、パソコンメーカーは、買い控えが起こるとわかっていても、値上げに踏み切らざるを得ないという、厳しい状況になっているのである。

 こうした状況を考えると、いかにパソコン以外の商品で客を集め、収益を得るのかが販売店の勝負の分かれ目となる。(三浦優子●取材/文)
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