店頭流通

新宿西口ヨドバシの牙城に挑む ビックが喉元に突き付ける新店舗 

2002/03/25 18:45

 新宿西口の主導権争いが激化している。新宿駅からヨドバシカメラ新宿西口本店へと顧客が流れる導線上に5月下旬、ビックカメラとビックピーカンが進出。ヨドバシへの送客を遮ると同時に、対面に店を構えるさくらやを脅かす。ヨドバシは今年11月、博多に2万級の超大型店を出店する。ビックグループは来年早々にも博多の既存店を拡張し、対抗策を打つ。札幌駅を挟んだヨドバシ対ビックの争いは激しさを増している。これが新宿西口に飛び火し、博多の闘いへとエスカレートする。

ビックが喉元に突き付ける新店舗

 新宿西口一帯にあるヨドバシ店舗群は、全社の4分の1に当たる年間1100億円を売り上げる。主力のマルチメディア館は、当初4フロア程度しかなかったが、増築を重ね今では7フロアに増えた。隣の店舗との連絡通路をつくり、異なる建物同士を行き来できる。新宿西口から見てロータリーを挟む反対側一帯は、ヨドバシの牙城である。

 ビックピーカン商品部の橋本修取締役部長は、「5月末に出る新作夏モデルを一堂に並べる」と、開店のタイミングを見計らう。夏モデルの勢いで、一気に新店舗を立ち上げる構えだ。ビックグループは、新宿西口の北側に位置する小田急百貨店ハルク館(地下3階・地上8階)の4フロアに出店。1フロア当たり2300あり、現在、ハルク館は3階から6階を改装中である。

 ハルク館は、ヨドバシに足を運ぶ顧客が通り過ぎる導線上に立地する。小田急百貨店では「西口全体を視野に入れた改装であり、競争力のある専門店を引き入れることで集客力を高める」と、戦略的な狙いをうかがわせる。

 対するヨドバシカメラ新宿西口本店統括店長の日野文彦取締役部長は、「1日800万人とも言われる新宿西口の乗降客がいても、過剰出店になる危険性はある。品揃えと価格、人材教育の3点をバランス良く強化することで打ち勝つ」と気を引き締める。

 駅により近いビックカメラの立地には優位性がある。ただ、路面に接する1階部分と、陸橋と接続する2階部分は、小田急百貨店が押さえ、ビックは2階の一部から3階以上になる見込み。路面や陸橋に接していない「空中店舗」であり、一概に良い点ばかりではない。

 ヨドバシとビックの闘いは、新宿西口や札幌だけでは終わらない。ヨドバシは今年11月、博多に2万級の超大型店を出す。大阪の梅田店と同じ規模だ。売上規模は初年度500億円以上を見込む。4月には計700人もの新卒を採用。人材確保のめども付けた。現在200人の社員を置く梅田店は、4月以降400人に増やす。売上目標も800-900億円に高める。この半年間、各地で育成した人材を博多店(仮称)に投入する。対するビックも、来年早々に現在の天神店(福岡市内)を拡張する準備を進める。

 一方、規模の争いに当惑する販売店もある。さくらやは、ヨドバシ新宿西口マルチメディア館並びのパソコン主力店を昨年末、「眼鏡売り場」に変えた。同時期に新宿西口駅前店(00年12月出店)も改装し、商機を逃した。年末の稼ぎ時に主力店を閉じ、改装する姿は、不可解な印象を関係者に与えた。さくらや第2MD部の古賀信広パソコンOA担当課長代理は、「今は何も話すことはない」と、口を閉ざす。

 ある関係者は、「ビックは『さくらやに勝てる』と踏んでハルクに出店する。さくらやは『ビックがハルクに出店する』と知っていれば、西口駅前には店を出さなかったのではないか」と、早くも過剰出店の影響を指摘する。
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