店頭流通

PC夏モデル、価格上昇傾向 逆境に立ち向かう策は?

2002/03/18 16:51

 パソコンの夏モデルの価格が、全体的に1割程度上がる見通しだ。NECのパソコン製造子会社であるNECカスタムテクニカ・片山徹社長は、「液晶パネルやメモリの価格が上昇している。頭の痛い問題」だとし、ソニーマーケティングの池戸亨副社長は、「部材の調達費用が上がることで、顧客の求める価格帯に収まるかどうか、非常に不安だ」と話す。

 有楽町ソフマップの中阿地信介店長は、「売れ筋のバイオWが16万円で出るなど、パソコン単価が下がる傾向にある。ここにきて、中身は変わらず“価格だけ反発”するのは不安だ。新品パソコンを購入するとき、下取りを積極的に出してもらい、割安感を出したい」と話す。

 NECカスタムテクニカの片山社長は、「昨年12月を底値に、128MBのメモリは12ドルから一気に46ドルに跳ね上がった。液晶パネルも3割増しで推移している。メモリは128MB30ドルが採算ライン。液晶パネルは台湾勢が引き続き設備投資をしていることから、これ以上、部材価格が上がり続けることはない」としているが、夏モデルへの価格転嫁は必至だ。

 ソニーマーケティングの池戸副社長は、「1割程度の価格上昇は、営業努力でなんとかしてみせる。しかしそれ以上は問題だ」と頭を抱える。昨年来のパソコン不況が続いているなか、価格が1割上がることで、購買意欲にどれだけ水を差すことになるのか「未知数」(ソニー・木村敬治執行役員)だと、不安の声が聞こえてくる。

 4割近いシェアを獲り、「今年度、国内では黒字」と好調ぶりを示すソニーでさえも、今年度国内180万台の出荷台数を、今年に入り170万台に下方修正した。NECは構造改革費用を引き当て、今年度のパソコン部門は赤字だ。ソニーマーケティングの池戸副社長は、「来年度は、国内170万台以上の販売を目指すが、今の情勢で“2ケタ成長”は無理」と、慎重な構えを示す。

 一方、弱腰のメーカーに懸念を示す意見もある。ヨドバシカメラ新宿西口本店統括店長の日野文彦取締役部長は、「昨年来、パソコンが売れないからといって、メーカーは安易な価格訴求に走っている。今、市場は“安かろう、悪かろう”のパソコンを求めていない。世帯普及率が6割に達し、次にパソコンを買い替えるときは、今よりも良いもの、本当に価値のあるものを求めている。価値のないパソコンは、仮に1台8万円でも売れない。30万円は高いが、20万円台中盤までは十分にいける」と分析する。

 ソニーマーケティングの福島秀樹バイオマーケティング部統括部長は、「メーカー各社は、製品に自信がないから、単価アップに戦々恐々として足がすくんでいる。ちゃんと自信がもてる製品を正々堂々とした価格で出すべき」と厳しい。

 NECカスタムテクニカの片山社長は、「パソコン普及期は安いモデルが牽引役になった。しかし、世帯普及率6割の現在、顧客が求めるパソコンに変化が出てきているのは当然」と、部材高騰という逆境に立ち向かう。

 夏モデルは5月下旬に店頭に並ぶ。この段階ではADSLなどブロードバンド(BB)回線の普及は未成熟だ。依然として“足腰が弱い”市場であることに変わりはない。メーカー各社は、BB回線が1000万世帯を超えたあたりから、再びパソコンが売れ始めると予測している。
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