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PDAの販売動向 1年でパームが勢力拡大

2002/03/11 16:51

 パームOSの追撃を掲げるマイクロソフトのウィンドウズCEだが、この1年間、シェアが減少傾向にあることが明らかになった。パームOSは、パームコンピューティングが昨年12月から実売で4000円台と低価格化を図ったのをはじめ、ソニーの「CLIEシリーズ」が個人向けを標榜するなど、店頭市場に強みをもつ。これに対し、ウィンドウズCE対応のPDAは、企業市場の開拓を前面に掲げている。この両陣営の戦略の違い通り、BCNランキングにおいては、店頭に強いパームOSのシェアが拡大している。

企業向けのウィンドウズCE

 OS別に見たPDA市場は、パームOSを採用した製品を販売するパームコンピューティング、ソニー、ハンドスプリングなどのパーム陣営、ウィンドウズCEを採用した製品を販売するNEC、カシオ、コンパックコンピュータ、東芝、ヒューレット・パッカードなどのウィンドウズCE陣営、独自OSを採用するシャープと、大きく3つに分かれる。

 日本では、シャープが「ザウルス」で作り上げたPDA市場に、パームコンピューティング、マイクロソフトといった新規参入ベンダーが分け入った格好。米国ではパームが先行する市場をマイクロソフトがどれだけ追撃できるのかが焦点となっている。マイクロソフト自身も、国内外を問わず、ことあるごとにトップシェア奪回を意識した発言を行い、今後どのようにシェアが推移するのかに注目が集まっている。

 しかし、国内の店頭市場に限れば、この1年間でウィンドウズCE陣営のシェアが下がり、逆にパーム陣営のシェアが拡大している。これは、パームコンピューティングが昨年11月から「Palm Computing m100 日本語版」を5000円弱という思いきった実売価格で販売開始したこと、ソニーが12月にCLIEシリーズの新製品を投入したことなどが要因。販売店にとっても、低価格で販売できるPDAは年末商戦の目玉商品となるため、パームコンピューティング製品を積極的に販売した。

 これに対し、ウィンドウズCE陣営は、店頭よりも企業マーケットの開拓がPDA市場全体の拡大、ウィンドウズCEのシェア拡大につながると捉えている。昨年10月、PDA用ウィンドウズCEの「Pocket PC 2002」の発表を行った際、マイクロソフトの阿多親市社長は、「2005年にはパームに追いつき、一気に抜き去りたい」と宣言した。さらに、「企業マーケットに対し、Pocket PC単体ではなく、サーバーを含めたソリューションを提供していくことで、ビジネスマンにとってPDAは必須なものとなるのではないか」と、企業需要がPDA市場拡大の大きなファクターになるとの見方を示した。

 Pocket PCを提供するハードメーカーも、それに呼応して企業向けソリューションを構築していく方針を示しており、店頭販売よりもそちらに力を入れている。このことが、BCNランキングにおいてはウィンドウズCE搭載機のシェアがこの1年で6%弱落ち込んだことに表れている。企業市場の開拓は、店頭のように実売価格を下げればマーケットが広がるわけではない。市場拡大までに時間がかかることは否めない。しかし、企業向け市場でシェアが拡大していけば、店頭においてもシェアが拡大し、PDAマーケット自体も拡大していくことになるはずだ。ただ、現状ではそういった傾向はまだ表れてない。

 マイクロソフトは、「今年は企業向けソリューション構築が具現化していく年であり、シェアとしてパームを抜くのは早くても03年」と予測している。現状でシェアが少々下落傾向にあるとしても、それは折り込み済みとの見方も示す。(三浦優子)
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