店頭流通

Xbox、国内デビュー ゲーム専用機、再び戦国時代へ

2002/03/04 17:00

 

ブロードバンド対応がカギ

 「Xboxは次世代のエンターテインメント・プラットフォームとして、既存のゲーム専用機の追随を許さない存在だ。一度これでゲームをやってしまうと、ほかのゲーム機で遊ぶのは難しい」――。マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクトは自信満々に言い放った。2月22日の発売後の評価ではユーザーに概ね好評をもって迎えられたXbox。ハードウェアの性能ではソニーの「プレイステーション2(PS2)」、任天堂の「NINTENDO GAME CUBE(ニンテンドーゲームキューブ)」を凌駕するが、肝心のブロードバンドサービスへの対応ではPS2に先手を打たれてしまった。

●「従来のゲーム機とは違う」スペックに高い評価も

 マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が、21日夜-22日早朝にかけてのイベント出席とプレス対応に追われる忙しい日程の中で何を訴えたかったかといえば、要するに「Xboxはこれまでのゲーム機とは違う」という、ただこの一点に過ぎなかった。

 マイクロソフトの次世代ネット戦略である「.NET戦略」の一環として語られるという側面ももつXbox。同社の全体戦略を俯瞰するならば、確かにそうなのだが、あくまで「まずはゲーム専用機としての成功が絶対に必要」(ゲイツ会長)なのである。

 ユーザーの反応はどうか。実際にXboxを試してみたユーザーの評判はなかなか好調のようである。

 幾人かのユーザーに話を聞いてみたところ、「大味なソフトばかりかと思ったが、いい意味で予想を裏切られた」、「ハードのスペックが高いとここまでのことができるのか」という、概ね賞賛に近い言葉が返ってきた。

 もちろん、ソフトの出来の良さも大きな要因だ。コナミの3Dシューティング「エアフォースデルタ2」、テクモの対戦型格闘アクション「DEAD OR ALIVE3」、マイクロソフトのスノーボードゲーム「天空-Tenku-」など、グラフィックスの美しさだけでなく、操作性の良さ、ゲームバランスの良さなど、さまざまな点でハードウェアのスペックを如何なく発揮した良質のタイトルが揃った。

 ハードウェアのスペックはまさにマイクロソフトが設計しただけあり、コンパクトに収まったパソコン以外の何者でもない。

 CPUにはインテルのペンティアム3(733MHz)が搭載され、グラフィックス・チップはマイクロソフトとNVIDIAの共同開発によるカスタム233MHzチップが搭載されている。メモリは64MB、メモリの帯域幅は6.4GB/秒、ポリゴンのパフォーマンスは116.5M/秒である。

 記録媒体には2-5倍速のDVD、ハードディスクが内蔵され、イーサネット端子が標準装備。定価の3万4800円という価格はゲーム専用機としては割高に感じられるが、このスペックと同等レベルのパソコンと比較すれば驚異的な価格設定である。

 ただ、PS2やゲームキューブにもいえることだが、ハードウェアは赤字で、ソフトパブリッシャーからのライセンス収入でハードの赤字を埋めるというビジネスモデルが、ゲーム業界ではあたりまえになっている。

 ソフトが売れなければハードの供給元であるマイクロソフトも厳しい立場に立たされる。

 日本での初回出荷は25万台としているが、発売当初は「月平均50万台を維持しなければ失敗」という厳しい意見も聞かれる。

 ハードの出荷とソフトの出荷が相乗効果を上げて、月平均50万台という破格の数字を叩き出す必要がマイクロソフトには求められている。

 もっとも、ハードは赤字覚悟とはいえ、さまざまな周辺機器を別売りにすることで、コストの削減を図っている。記憶容量502ブロックのメモリユニットやDVDビデオ再生キット、AV拡張パック、コンポーネントAVパックなどは、OEMゆえにライセンス料を支払わなければならず、すべてに標準搭載するにはマイクロソフトにとっても危険であった。

 また、入出力インターフェイス4口にUSBをあえて採用しなかった点にも、「周辺機器の販売を見込んでいるのではないか」とする意見があった。

●ネット接続が主流、ソニーを追う展開に

 Xbox登場によるゲーム専用機の隆盛は、同市場ではいわば第4期目にあたる。任天堂のファミリーコンピュータの登場を第1期とし、同じくスーパーファミリーコンピュータの登場が第2期、プレイステーション、セガ・サターンの登場からNINTENDO64、ドリームキャストの登場までを第3期と捉えられる。

 この各段階で常に焦点となってきたのは、ハードウェアの基本性能だった。8Mビットマシンから始まり、16Mビット、32Mビット、64Mビットへと進化を続けたハード上で、ソフトがどの程度美しく表示されるか、あるいはどの程度の高速演算が行えるかが問題だった。

 今回に限っては、PS2、ゲームキューブ、Xboxそれぞれのハード性能もさることながら、ブロードバンドの活用によるソフトサービスの展開の仕方に焦点が移っていることが新しい。

 社団法人コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会(CESA)がまとめた「CESAネットユーザー調査報告書・第3集」によると、インターネットユーザーのゲーム参加率は一般生活者の2倍以上であり、よりゲームに近い存在であることがうかがえる、としている。

 また、ゲーム専用機をネットに接続してのプレイ移行率は、ゲーム参加者の3割弱であり、理由として挙げられている項目では、新しいジャンル・遊び方への期待度が現れているという。

 だが、13-18歳の男性では、ネットゲームプレイへの移行率は57.8%(「遊びたい」+「まあ遊びたい」)であり、男性で19-24歳でも48.7%(同)という結果となっている。

 4月にブロードバンドサービスをいち早く開始するPS2に対し、Xboxのオンラインサービス開始は未定だ。マイクロソフトにとっては、まさかPS2が4月からサービスを開始するとは思わなかったに違いない。

 そういう意味ではスタートダッシュが一歩出遅れた感があるのだが、すべてはソフト次第である。

 まずはこの1年間を乗り切ることが、マイクロソフトにとって最初の試練となるだろう。(谷古宇浩司●取材/文)
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