店頭流通

販売店、ビデオ会議活用へ

2002/03/04 16:51

 パソコン販売店の社内会議が急速に電子化している。コンプ100満ボルトの飯森健一社長は、「4月から全42店舗をADSLで結び、ビデオ会議システムを導入する」とし、OAシステムプラザの大喜一夫社長は、「昨年、全40店舗に従来型の交換機を使ったビデオ会議を導入したが、コストが高い。今後はADSLなど、より安価なビデオ会議システムを検討中」と話す。ADSLを使い、安くて高品質なビデオ会議システムを販売するベンダーも増えている。社員教育のためのeラーニングの基盤整備にも役立ちそうだ。

意思伝達の迅速化狙う

 会議の電子化は、大きく分けて2系統ある。1つはコンプ100満ボルトやOAシステムプラザのようなビデオ会議で、もう1つはグループウェア系だ。

 ビデオ会議は、社長訓辞や朝礼など少数の話者が多人数に情報を伝達するケースで威力を発揮するのに対し、グループウェアは水平方向の情報共有を得意とする。また、両方を活用するケースもある。

 コンプ100満ボルト・飯森社長は、「音声だけの電話会議はすでに行っている。これに映像を加えることで人材教育の効果を期待する」と語る。OAシステムプラザの大喜社長も、「実際に導入してみて、ビデオ会議は意思疎通だけでなく、社員教育の効果も大きいと実感した」と、人材のスキルアップで差別化を狙う。PCデポでも2年前から直営15店舗で電話会議を導入しており、「ビデオ会議の導入も検討」している。

 ビデオ会議の活用方法は、社内用だけにとどまらない。OAシステムプラザでは閉店後、テレビ電話をメーカー担当者に貸し出し、店員向けの新商品説明に活用。「当該商品の担当者と前もって時間を打ち合わせ、ビデオ会議を通じてメーカー担当者から講習を受ける。問題は、参加店舗が増えると電話代がかさみ、1時間あたり10万円になることもある」(大喜社長)と、コスト高が難点だと指摘する。

 ここに目をつけた企業もある。ジャパンメディアシステム(JMS)は、韓国のインターメディアとビデオ会議ソフトを共同で開発。ADSL回線を使うことで、1店舗あたり月額2000円という低価格でビデオ会議を可能にした。NTT-MEでも、IP電話と組み合わせたビデオ会議システムを開発しており、「今後、ADSLなどを使ったビデオ会議が急速に広がるだろう」と需要拡大に期待をかける。コンプ100満ボルトでは、カノープス製を採用した。

 一方、グループウェアに重点を置いている販売店も多い。九十九電機の鈴木淳一社長は、「350人の社員全員が掲示板やメーリングリストで、商品や分野ごとに分かれた情報を活発に交換している。これがなければ仕事にならない」と話す。ソフマップでも、グループウェアのノーツを導入済みだ。全社員900人が製品や分野別に100個ほどの小部屋をつくり、活発な意見交換をしている。

 だが、ソフマップでは、「ビデオ会議は東京と大阪を結んだものはあるが、一般の店舗にはない。この先、IP化が進み、費用が安くなれば検討する」と語る。エイデンでも、「ビデオ会議があれば便利だと思うが、費用対効果の面で検討中」という。

 ビックピーカンの橋本修取締役は、「デジタルカメラで撮影した画像を電子メールに添付すれば、ほとんどの報告・連絡業務は片づく。1店舗の社員が100人を超えるなど大型化が進んでおり、シフトを組んで働く店員を一度に集め、ビデオの前に並ばせるのは現実的でない。店長宛に画像付き電子メールで指示を出し、この方針に従い、店長など幹部社員が店員を教育した方が早い」とのスタンスだ。

 広範囲に店舗が点在する販売店にとって、迅速で正確な意思伝達や人材教育は重要な課題。ADSLの普及で、安くて高品質なビデオ会議を簡単に導入できるようになった。

 従来からの対面による会議と並行して、ビデオ会議やグループウェア、電子メールによる意思疎通、会議の電子化は、店舗の競争力をつけるうえで不可欠であるばかりでなく、将来的にはeラーニングの基盤整備にも役立つ。
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