店頭流通
好調なバイオWに見るソニーの戦略 “デスクトップではない”新コンセプトの勝利
2002/02/25 17:00
●「AVクライアント」
ソニーの幹部は、バイオWを「AVクライアント」と表現する。
デスクトップパソコンという表現がパソコンの機能を前面に打ち出し、さらにインターネット端末としての役割を果たすものを指すのであれば、バイオWは商品コンセプトからも、従来の“デスクトップ”という概念に合致しないとの宣言である。
ソニーがバイオWで目指したのは、AV(音響・映像)機能とITの融合という、かねてより掲げてきたテーマである。
常に電源をスタンバイ状態とし、テレビを見たり、ハードディスクへ映像録画したりと、AV機器としての使い方に重点を置いた。
デザインも、リビングに置いて違和感がないものを採用した。
「デスクトップパソコンという考え方だったら、15.3インチのワイド画面は決して採用しなかった」。ソニーの幹部はこう打ち明ける。
「15.3インチのワイド液晶は、通常の15インチ液晶のノートパソコンに比べ、結果として画面の縦サイズが小さくなる。パソコンという観点では魅力が半減するため、これでは市場に受け入れられない。しかし、新たなカテゴリーの商品という考え方をすれば、最も適したサイズが15.3インチのワイド液晶だった」と語る。
それをうまくデザインすることで、奥行き19cmと、省スペース化も実現している。
●色と価格で独自戦略
製品マーケティングでは、2つのポイントがある。
第1は、今回の製品では敢えてバイオカラーと呼ばれる紫色を採用せず、ブラックとホワイトの2色を採用したことだ。「新たなコンセプトの製品には新たなカラーで」、という考え方が開発チームにあり、バイオカラーの採用は一度も議論されなかったという。
しかも、2色を揃えたのは、事前のアンケートで比較的高年齢層にはホワイト、若者にはブラックというように、年齢層によって明確に好みが分かれたからだという。この結果、同社初の2色対応に踏み切った。これが選択の幅を広げることにつながった。
第2のファクターは価格戦略だ。
これも事前アンケートで、「20万円を切れば購入する」という回答者が多数を占めた。しかし、実売価格はそれをはるかに下回る15万円台となっている。価格が安いデスクトップのパーツを多用することで、価格をここまで下げることに成功したわけだが、それにも関わらず、本体正面から見た雰囲気はノートパソコンよりもスリム。ソニーのデザイン力の面目躍如かもしれない。
今回の製品によって、ソニーはバイオのデスクトップ戦略を明確に分化させることになる。バイオWを核としたAVクライアントの方向と、MX、RXの発展によるホームサーバー戦略である。今回、その第1弾製品が市場に受け入れられたことは、ソニーの製品開発をさらに加速させるだろう。(大河原克行●取材/文)
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