店頭流通

PDAの販売動向 店頭市場で苦戦続く

2001/12/24 17:00

 店頭の携帯情報端末(PDA)市場が厳しい状況に陥っている。販売台数、金額ともに前年割れの傾向が続く。いまだ市場活性化の起爆剤となるアプリケーションがないこと、PDAの活用がビジネス現場にあることをハード/ソフトメーカーが気づき、ビジネスモデルを個人向けから法人向けへとシフトさせていることが、店頭市場不振の要因と考えられる。店頭では、昨年4月以降の華々しさはすでに消え去り、今年の年末商戦も厳しい結果になりそうだ。(谷古宇浩司)

アプリケーション不足が災い

 ボーナス商戦直前期の携帯情報端末(PDA)の販売状況は、8月をピークに下降傾向をたどっている。台数、金額ベースでの対前年同月比推移をみると、8月は台数で前年同月比125%、金額で同99%。


 しかし、この台数の伸びは、ハンドスプリングの「バイザーシリーズ」の大幅な価格低下とソニー・クリエの新シリーズ発売によるところが大きい。

 総じて夏期商戦のデータ上の「好調」は、本質的な「好調」とは裏腹な要素で構成されている。7月時点での1台あたりの平均単価(総販売金額/総販売台数)は3万9680円だが、8月には2万9403円となり、1万円以上の価格ダウンとなっている。

 そのため、金額面での販売状況を示す数字では、8月でも前年同月比99%と前年割れの実績となっているのである。

 その後、夏期商戦が終了し、台数、金額ベースともに軒並み数字は下降。11月時点で、台数ベースで同56%、金額ベースで同52%にまで落ち込んだ。各ベンダーの台数、金額ベースでの販売実績も、前年と比較すると厳しい状況だ。例えば、8月にはシャープが台数ベースで同81%、金額ベースで同53%、パームコンピューティングがそれぞれ同57%、同55%、ハンドスプリングが同97%、同44%である。

 この状況は明らかに不調といっていいだろう。昨年4月以降、パームコンピューティング、ハンドスプリング、ソニーが日本市場にパームOS搭載機を携えて登場した際の華々しさは、現在では残念ながら見られない。

 この要因はどこにあるのか。メーカーおよび専門店販売員の意見を総合すると、最大の原因は、アプリケーション不足にあるようだ。新規ハードウェアの登場は、物珍しさも手伝って一気に市場が開花したかに見えたが、その実、「電子手帳」の域を出ない利用では、新規ユーザーを獲得するまでには至らなかった。

 PDAのライバルと目されてきた携帯電話の爆発的な普及を実現したのは、ワイヤレス通信とその上で動く簡単なコミュニケーションアプリの存在であった。PDAがワイヤレス通信の環境を実現し、さらにワイヤレス環境で活きるアプリケーションが登場すれば市場活性化につながると、メーカー、販売店関係者らは踏んでいた。

 しかし、現時点におけるPDAワイヤレス通信の主流は、PHSカードを差し込んだ形態であり、携帯電話ほどの簡易性を実現したとはとてもいえない。

 ただ、PDAが、ビジネス利用に向くことがハード/ソフトメーカー間に共通の認識となり始めた。

 PHSカードを購入し、メールの送受信やアプリケーションデータの同期を行うビジネス層と、仕事を離れた個人ユーザーを結びつけるのは非常に困難だったのである。唯一ソニーは、クリエをエンターテインメントツールとして売り出しているが、ソニーの場合、AV機器やパソコンなど広範なラインアップの一部としてアピールしている。そのため、ほかのメーカーが真似をするのは非常に困難だ。

 いずれにしても、PDA店頭市場の状況は、年末商戦でも厳しい結果になりそうである。
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