BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会』

2025/03/28 09:00

週刊BCN 2025年03月24日vol.2052掲載

令和の「ひのえうま」はどうなる

 「ひのえうま」を知っているだろうか。十干十二支の一つで、60年ごとにめぐってくる年のことだ。本書によると、古代中国が起源の「陰陽五行説」に由来しており、元々は「災いが多い年」といった程度の考え方だったという。しかし、ここから転じて、ひのえうま生まれの女性は気性が激しく、婚姻に差し障りがあるため、子の生み控えをすべきとの風潮ができたそうだ。

 本書では、これまでのひのえうまについて、資料やデータを用いながら分析している。特に1966年に訪れた「昭和のひのえうま」の際には、前後の年に比べ出生数が極端な落ち込みを見せたという。災害、はやり病、戦争、不景気などの要因があるわけでもなく、ただ迷信によって、この1年だけが極めて出生数が少ないというのが、なんとも異様に感じられた。

 暦上では2026年がひのえうまに当たる。現代はさまざまな選択がしやすい時代へと変化してきている。加えて、今や十干十二支を意識している人自体が少なくなった。著者が「令和のひのえうまでは、大規模な出生減が生じる可能性は極めて低い」と記しているように、この迷信は現代において、大きな力を持つことにはならないだろう。(留)
 


『ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会』
吉川 徹 著
光文社 刊 990円(税込)
  • 1