BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『課税と脱税の経済史 古今の(悪)知恵で学ぶ租税理論』

2025/03/14 09:00

週刊BCN 2025年03月10日vol.2050掲載

「減税を」と言いたいけども

 行政施設などで、税に関する言葉を記した書道作品の展示を見かけることがある。「納税」「税を考える」といった言葉が壁一面に並ぶ様子はどこか異様で、見かけると、つい立ち寄ってしまう。書き手は大体が子どもであり、幼いうちから税への関心を高める狙いなのだろう。よく考えれば、社会に出ると否応なく税と向き合うことになるが、その意義を深く考える機会はあまりない。

 本書は税制度にまつわる歴史上のエピソードを取り上げつつ、公平性、実質的な税負担者は誰かという帰着の問題、効率性、税務管理、政策形成といった税制度の本質を掘り下げている。現代では馬鹿げていると感じる税制度や狡猾な租税回避の手口などが紹介され、大人にとっては、書道で筆をふるうよりも、楽しみながら税への理解が深められるはずだ。

 最近では、「103万円の壁」に端を発する議論が活発化しているように、税制度は古今東西を問わず、課税側、納税側双方にとって重要な問題である。税金を減らしてほしい願望は記者にもあるが、減った分は何かで埋め合わせねばならず、巡り巡って私たちの首を締めかねない。納税者は制度変更を声高に叫ぶだけではなく、それがもたらす影響を冷静に考える必要がある。(無)
 


『課税と脱税の経済史 古今の(悪)知恵で学ぶ租税理論』
マイケル・キーン、ジョエル・スレムロッド 著 中島由華 訳
みすず書房 刊 4950円(税込)
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