BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『マンガの原理』

2025/02/28 09:00

週刊BCN 2025年02月24日vol.2048掲載

漫画家の道具箱

 マンガは1ページを複数のコマに割り、それぞれのコマに絵と言葉を配置する複雑な構造を持つ。マンガに慣れ親しむ日本人は、当たり前にマンガは読めるものと考えがちだが、それは右から左に、上から下に読み進めるなどの「漫画文法」と呼ばれるマンガ独自のルールを自然と体得しているからこそ可能なことだ。

 本書はこの漫画文法をマンガ編集者と人気漫画家が体系的にまとめ、解説したもの。漫画家を目指す作り手側を意識して書かれており、ヒット作を生み出す際に著者が活用するさまざまな技法を漫画文法という切り口から知ることができる、いわば漫画家の道具箱のような一冊だ。

 漫画文法に詳しくなることは、作り手だけではなくマンガ好きの読者にとっても意味があることだ。漫画文法は読者が自然にマンガの世界を楽しめるように作者が凝らした工夫であるため、作品を最大限楽しむために詳しくなって損はない。加えて、漫画文法の鉄則を習熟しているからこそ基本から逸脱した表現にも気づけるようになる。例えば登場人物の不自然な顔の向きや目線には作者が込めた強い意図が隠されているかもしれない。
(石)
 


『マンガの原理』
大場渉、森薫、入江亜季 著
KADOKAWA 刊 2420円(税込)
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