▼かつて、一度の買い物で複数のスーパーマーケットを回っていた時期がある。生鮮食品はこの店、グロッサリーはあの店、惣菜は別の店、といった具合に、価格や品ぞろえに差があったため、少しでも安く、良質なものを買おうと思っていた。

▼ただ、よく考えてみると、価格差は大きくても数十円ほどで、品質も極端に差はない。得をした「気」がしても、時間や労力を考えると、実利的かどうか怪しくなり、結局、その日に一番欲しい分野で、最も品ぞろえが良い店に向かう程度に落ち着いた。買い物の目的を明確にし、多少の価格差は諦め、総合的な満足度を優先するようにしたのだ。

▼あるITコンサルティング企業の調査によると、国内でAIを導入した企業の多くは、その効果の測定をほとんど行っていないという。競合に遅れまいとAIを入れたはいいが、本当に価値を生み出しているかはわかっていないということである。

▼AI活用には大きな投資が求められる。何のために使いたいのかを明確にし、適切な効果指標を定めなければ、闇雲に時間とコストを費やすだけだ。先んじて使いこなしたいという意欲は大切だが、それだけでは実利には結びつかないこともある。（無）