BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『ギャンブル脳』
2025/02/14 09:00
週刊BCN 2025年02月10日vol.2047掲載
「嘘」と「借金」で身を滅ぼす
ギャンブル依存症は、脳内化学伝達物質の異常で発症し、アルコール依存症や薬物依存症と同様に髄液や尿の検査で診断が可能だという。症状の特徴は「嘘」と「借金」で、その場しのぎの言い訳をしながらサラ金からの借り入れや、友人、家族に無心を繰り返す。誰からも相手にされなくなると窃盗などの犯罪に走るのが典型例だと、ギャンブル依存症と向き合って35年になる精神科医の著者は述べている。米大リーグで活躍する大谷翔平選手の元通訳がスポーツ賭博にのめり込み、大谷選手のカネに手をつけたとされる事件は「ギャンブル脳の典型例」だと指摘。国内患者数は200万人近くいて、大谷選手のように巻き込まれる同僚、家族、友人などの周囲の人を含めると、悪影響の範囲は5倍の1000万人に及ぶと推測している。
患者の依存先ギャンブルを調べてみると、競馬や競輪、競艇、オートレース、サッカーくじ、宝くじの公営賭博に加え、パチンコ・パチスロ、賭け麻雀、野球賭博などさまざまで、比率で見ると実に8割をパチスロが占めた。スマートフォンのゲームや国内で誘致が進むカジノなどでも依存症となる可能性があり、家庭崩壊や失業、犯罪に走る人が増えると警鐘を鳴らす。(寶)
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『ギャンブル脳』
帚木蓬生 著
新潮社 刊 990円(税込)
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