北斗七星

北斗七星 2025年2月10・17日付 vol.2047

2025/02/14 09:00

週刊BCN 2025年02月10日vol.2047掲載



▼最近、「ジェボンズのパラドックス」というキーワードをよく目にする。これは、19世紀英国の経済学者、ウィリアム・スタンレー・ジェボンズが著書で指摘した現象だ。エネルギー源としての石炭の利用が拡大し、当時も資源の枯渇が議論になった。技術革新によって機械のエネルギー効率が高まれば石炭の使用量は減るという意見があったのに対し、ジェボンズは、効率が改善して経済性が高まるほど、より広範な用途に石炭が利用されるようになり、全体の使用量は増加すると反論したのだ。

▼このパラドックスが今話題となっている理由は、中国のディープシークが低コストな生成AI技術を発表したからだ。GPU需要に急ブレーキがかかるとの見方が広がり、関連企業の株価が急落する一幕があったが、テック業界関係者の間では、ジェボンズのパラドックスで総需要はさらに拡大する、という見解のほうが優勢に見える。

▼PCもインターネットも、その普及の背景には低価格化につながる技術革新があった。多くの企業が自社独自の生成AIモデルを構築して業務に取り入れるという世界はこれまで夢物語だったが、実現する可能性もゼロではなくなりつつある。(螺)
  • 1