マニアが厳選した今見るべきビル

　神社仏閣や城、偉人の邸宅など、歴史的建造物の鑑賞を好む人は多い。著名建築家が設計した作品を見て回る人も珍しくない。加えて、建築関連のファン層の中で一つのジャンルを形成しつつあるのが、「ビルマニア」の人たちである。空に向かってそびえ立つ超高層ビルは一見無機的な物体であり、従前はアートに近い文脈で語られてきた建築の魅力からは距離があるようにも思える。しかし、高さ100メートルを超えるビルの足元から上を見上げると、その大きさ自体が無言のメッセージとして頭上にのしかかってくる。ネット上を検索すると、この迫力が生む美しさに魅せられた人たちが全国各地で撮影した、超高層ビルの写真がたくさんヒットする。

　本書は日本を代表する著名ビルマニアが厳選した国内111棟の超高層ビルを、美麗な写真とともに解説付きで紹介する、いわばビルの図鑑である。それぞれのビルは「ランドマーク」「フォルム」「ヒストリー」「テクノロジー」の4種類に分類されており、どんな観点が見どころなのかがわかりやすい。今回の新刊は8年前に刊行した同書の増補・再編集版となっており、ここ数年の間だけでも記録を塗り替えるような新たなビルが生まれたことがわかる。ビルの変遷は街が生きている証である。（螺）
 

『日本のビルベスト111』
＠関西人・中谷幸司　著
エクスナレッジ　刊　1980円（税込）