BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『新左翼・過激派全書 1968年から現在まで』

2025/01/10 09:00

週刊BCN 2025年01月06日vol.2043掲載

離合集散の歴史でなければ

 中核派、革マル派、ブント、解放派……。最近ではあまり聞かれなくなった新左翼の党派名である。新左翼とは1960年代の左翼運動において、既成左翼を批判して生まれた政治勢力であり、本書はその派閥の形成過程を、機関紙誌などを基に詳細に解説している。問題はその数である。本書だけで80近い党派が記されているから驚きだ。新左翼の歴史は離合集散の繰り返しであり、細分化の果てに泡沫のような組織が浮かんでは消えていった。

 「人が3人集まれば、二つの派閥ができる」とは、大平正芳元首相の言葉だそうだが、複数の人間による組織には、大なり小なり、多数派と少数派ができる。そこで対立を避け、利害を調整し、共に受容できる方向を模索する行為が「政治」とも言えるが、容易に実践できるものではない。本質的には同じ方向を志向していたはずの新左翼組織も、例外ではなかったのだろう。

 「ヘルメット」と「ゲバ棒」に象徴されるように暴力行為も新左翼につきものだ。当時の彼ら彼女らの思想や主義は知る由もなく、現代的な価値観で評価することは無意味かもしれないが、分裂を回避し、暴力でなく対話によって社会変革を進めていたら、現代の日本はどうなっていたのだろうかと考えてしまう。(無)
 


『新左翼・過激派全書 1968年から現在まで』
有坂賢吾 著
作品社 刊 4950円(税込)
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