▼PCや携帯電話が登場する前、記者の仕事は現代よりものんびりとしていたのではないか。原稿は手書きで、時間を問わず電話がかかってくることはない。締め切りもずっと早かっただろう。似たような話は記者に限らず、あらゆる職種にあるはずだ。

▼テクノロジーは確かに仕事を効率的にしたが、それで人間が「楽になった」とは言い難い。できることが格段に増え、求められるアウトプットの質は向上し、労働の密度は高まっているとさえ言える。とはいえ、PCや携帯を捨てるわけにはいかない。時代は不可逆的だ。浸透し切ったものに抗うことは難しい。

▼近年、リモートワークを縮小する動きが続く。最近も大手IT企業が原則週1回出社を設定し、注目を集めた。リモートの弊害をなんとかしたい経営側の言い分は理解できるが、いささか安直なようにも感じる。

▼一度定着した慣習を変えるのは簡単ではない。命令すれば労働者は従うだろうが、面従腹背にもなりかねない。変化を受け入れさせるには、経営側の工夫が必要だ。それは良くも悪くも時代の要請である。2025年も働き方は変化し続けるだろう。IT業界の片隅から、その様子を見つめたい。（無）