BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『転売ヤー闇の経済学』
2024/12/13 09:00
週刊BCN 2024年12月09日vol.2040掲載
転売現場を徹底取材した潜入ルポ
希少性が見込まれる商品を大量に仕入れてネットオークションやSNSなどを使って転売する「転売ヤー(転売屋)」。本書はその活動を密着取材したルポルタージュだ。カードゲームのレアカードや新型ゲーム機、ディズニーの新作グッズ、著名人の推しグッズ、高級酒など転売の現場を2年余りの時間をかけて取材した。玩具卸店の“裏稼業”としてレアカードだけを抜き取って売り飛ばす現場や、高額バイトの募集で集まった人を動員して新型ゲーム機を購入する様子を赤裸々にレポート。ディズニー新作グッズでは転売ヤーを同行取材するためにディズニーランドのグッズ売り場と、買い付けた商品の運搬用の車が停めてある駐車場を何度も往復。1日で14キロも歩いたという。
ネットで誰でも簡単に商品を売りさばけるようになったが、転売は法的にグレーな部分があり、定価で商品を手にできない消費者の不満を買うことも多い。市場動向を読み間違えればたちまち不良在庫の山を抱えてしまうリスクもある。
それでも転売行為がなくならないのは高値で売れたときの利ざやの大きさはもとより、賭博に通じる射幸心のようなものがそこには存在すると本書は指摘する。(寶)
『転売ヤー闇の経済学』
奥窪優木 著
新潮社 刊 946円(税込)
- 1