BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『デジタルの皇帝たち プラットフォームが国家を超えるとき』

2024/11/29 09:00

週刊BCN 2024年11月25日vol.2038掲載

巨大プラットフォームにどう向き合うか

 最近、あるWebフリーマーケットプラットフォームの運営企業への批判が、SNSを中心に広まった。出品者の1人が不正行為に関する企業の対応について不満の声を上げたことをきっかけに、複数のユーザーから過去のサポートの不備に関する指摘が次々と寄せられた。これを受け、企業側はサポート体制の見直しを図る方針を公表した。

 この件に限らず、デジタルプラットフォーマーのふるまいに疑義を呈する向きは少なくない。制度設計や運用のプロセスは不透明さが残り、利用者はただ従うのみという場合もある。プラットフォームの規模が巨大になればなるほど、その「権力」は強大となる。現代では国家に匹敵する存在とも言われるが、プラットフォーマーが「国民」である利用者を適切に保護できているかというと、必ずしもそうとは言えないだろう。

 本書はいくつかの世界的なプラットフォームの成り立ちを多様な視点で分析し、「独裁」とも呼べる権力構造を「民主化」する方策を検討している。著者はこう記す。「国家とは、究極的には、その国民によって統治されるべきものだ」と。利用者にもプラットフォーマーの独善的な振る舞いを正す権利はある。その意識を心に留めておくことが肝要なのかもしれない。(無)
 


『デジタルの皇帝たち プラットフォームが国家を超えるとき』
ヴィリ・レードンヴィルタ 著 濱浦奈緒子 訳
みすず書房 刊 4400円(税込)
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