▼米大統領選挙では共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利を収め、来年1月に次期大統領に就任することが決まった。国民を苦しめる物価高を目の敵にすることで支持を集めたが、同時に減税や高関税化などインフレ要因となる政策を高らかに掲げており、ちぐはぐさは否めない。しかし、現状の米国経済に対する有権者の不満はそれだけ切実なものがあり、民主党政権への反発につながったのだろう。

▼トランプ氏の当選に重要な役割を果たしたとされるのが、激戦州で金銭を配るという過激なPR活動も行った、実業家のイーロン・マスク氏だ。本稿執筆中に、トランプ氏がマスク氏を政府組織効率化のための要職に抜擢する方針を示したという話題が飛び込んできた。選挙戦での功労に報いるため、トランプ氏は自動運転、宇宙開発、AIといった領域での政策的支援を進めるとの見方が強い。

▼マスク氏と米国がこれからもテクノロジーの進化をけん引していくことは間違いない。しかし、マスク氏の「X」などのSNSは、社会を分断する装置としての性格をますます強めている。価値観の対立を増幅しようとするテクノロジーに、世界は歯止めをかけられるのだろうか。（螺）