BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『いのちの車窓から 2』

2024/11/08 09:00

週刊BCN 2024年11月04日vol.2036掲載

飾らない言葉にあふれる思い

 曲を書き自ら歌い、俳優として演技し、文章も書いてしまう。マルチな才能を発揮する星野源さん。アルバムは聴いているし、主演のドラマや映画はつい見てしまう。時々、深夜ラジオも聴いてるから、まぁまぁファンだろうか。7年ぶりの出版となるエッセイ集は、雑誌に掲載された文章をまとめた1冊だ。人を引き付ける歌詞を生み出し、印象に残る演技をする星野さんの頭の中はどうなっているのだろうと手に取った。

 収められたエピソードには、2017年から24年までの間の出来事がつづられている。海外での活動、コロナ禍の自粛期間を経て、ライブ活動を再開したときの思いなど。星野さんが産婦人科医を演じ、記者が毎回号泣しながら見ていたドラマについての回もあり、懐かしく読んだ。

 成功し、誰もが知る存在になったからこその苦悩も吐露している。自分の曲がひっきりなしに街で流れる様は「世間という肉体に星野源という常在菌を住まわせることに成功したと思えた」。うれしいはずなのに、追い詰められていく自分を友人の言葉が救ってくれたという。一瞬一瞬が二度と戻らないかけがえがないものだと語る飾り気のない言葉は、今を大切に生きる価値を思い出させてくれる。(緑)
 


『いのちの車窓から 2』
星野 源 著
KADOKAWA 刊 1540円(税込)
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