▼この10月は総選挙の月だった。東京都内では7月の都知事選のとき、一部候補者が珍奇な選挙ポスターで掲示板を”ジャック”するといった現象が議論を呼んだが、本稿執筆時点では、今回の衆院選では選挙運動そのものに目立った混乱は起きていないようだ。

▼投票に行かない人たちの間からは、理由として「誰が議員になっても変わらないから」という声が聞かれる。その意見には反論したいところだが、気持ちの部分ではわからなくもない。選挙ポスターには「改革」「実行」など何十年も変わらない文句が並び、街中で聞こえてくるのは候補者名の連呼。これでは政治に関心のない人に振り向いてもらうのは困難だ。

▼企業の人材採用についても似たような部分がある。ここ数年、多くの企業が「募集をしても人が来ない」と嘆いている。人口の構造的な問題もあるが、個々の企業の採用情報を見てみると、良い会社であることを宣伝しようとしていることは伝わるが、どの企業も同じような表現で違いがわからない。自社の魅力とユニークさを言語化して伝えられなければ、事業の存続に必要な最低限の人員も確保できない時代に私たちはいる。（螺）